研究課題
本研究は上皮組織特異的p130Cas欠損(p130Cas cKO)マウスを用いて、唾液腺の形態形成におけるp130Casの生理的役割の解明を目指す。当時の計画通り、胎生13.5日の野生型マウスおよびp130Cas cKOマウスの唾液腺原基を摘出し、器官培養を行った。経時的な形態変化と腺房細胞、導管細胞の分化マーカーのmRANの発現を比較したが、野生型マウスとp130Cas cKOマウス間の違いがなかった。抗p130Cas抗体を用いて免疫組織染色を行い、顎下腺及び舌下腺におけるp130Casの発現は腺房部ではなく顆粒性導管を含む導管部に特定することができた。6週齢の野生型マウスおよびp130Cas cKOマウスの顎下腺の組織学的解析を行ったところ、p130Cas cKOマウスでは顎下腺の顆粒性導管の大きさが小さいことが分かった。顆粒性導管に特別に含まれるペプチドであるEGFやNGFのmRNAの発現はp130Cas欠損することによって著明に減少したことが分かった。しかし、顆粒性導管以外の導管部に発現するケラチン19のmRNA発現の変化はなかった。また、舌下腺において明らかな違いは認めなかった。マウス顎下腺の顆粒性導管の発達にアンドロゲン経路が関わっているため、血液中のテストステロン量を調べたが、野生型マウスとp130Cas cKOマウス間の違いがなかった。5-EdU(5-ethynyl-2’deocyuridine)を用いて細胞の増殖を調べたところ、p130Cas cKOマウスの顎下腺で5-EdUの取り込みが減っていることが分かった。野生型マウスと比べて、p130Cas cKOマウスから唾液の分泌量が減り、唾液に含まれるEGFやアミラーゼの量も減少していることが分かった。唾液腺の成分の分析を行い、唾液中のカルシウム、ナトリウム、カリウム、無機リンなどの無機成分の違いがなかった。
3: やや遅れている
コロナウイルス感染症拡大のため、一部の試薬と消耗品の納品が遅れたため、実験の進行が遅れた。
マウス顎下腺の顆粒性導管の発達はアンドロゲン経路より制御されるため、p130Casがアンドロゲン経路の調節に関与する可能性を検討する。また、p130Casの欠損より、顆粒性導管細胞の分泌小胞の形成が影響されるかどうかについて検討する。p130Casと小胞輸送の関係を明らかにする。結果をまとめて論文発表する。
今年度参加した学会はウェブ開催となり、出張旅費の支出がなかった。また、論文の投稿は遅れているため、雑誌掲載に使用する予定の費用は次年度に繰り越すことにした。
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Journal of Cell Science
巻: 135 ページ: -
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