本研究の目的は、骨芽細胞分化に必須とされている転写因子Runx2と情報伝達系Wnt Signalingの古典的経路に着目し、これらの連関による分化と機能制御メカニズムの解明を目指すことである。2021年度においては、2020年度から作出を続けている、2系統の骨芽細胞特異的遺伝子欠損マウス(古典的Wnt経路の必須因子であるβ-cateninを欠失させたCol1EGFP;bCat cKOマウス、及びβ-catenin とRunx2を同時に欠失させたCol1EGFP;Runx2;bCat dcKOマウス)の解析を継続した。Col1EGFP;bCat cKOマウスでは8週齢における腰椎標本を用いた組織学的解析、および12週齢における大腿骨標本を用いたMicro CT解析を行った。その結果、8週齢において長管骨で確認された野生型マウスとの海綿骨量の差異が腰椎標本でも認められた。さらに12週齢の標本でもMicro CTにより8週齢と同様の海綿骨量の差異が確認され、週齢、および解析部位に関わらず野生型マウスとの差異が生じていることが明らかとなった。Col1EGFP;Runx2;bCat dcKOマウスでは8週齢における大腿骨標本を用いたMicro CTによる比較を行った。その結果、Col1EGFP;Runx2;bCat dcKOマウス大腿骨においても野生型マウスとの海綿骨量の差異が認められた。このことからβ-catenin とRunx2がともに海綿骨量を正に制御していることが示された。さらにこの差異はCol1EGFP;bCat cKOマウスで見られた差異と比較すると若干の増加が見られた。このことから、骨芽細胞における β-catenin とRunx2が相加的に協調して海綿骨量制御に関与していることが示唆された。
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