研究課題/領域番号 |
19K10058
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
倉本 恵梨子 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 助教 (60467470)
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研究分担者 |
大野 幸 鹿児島大学, 医歯学域鹿児島大学病院, 講師 (00535693)
後藤 哲哉 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 教授 (70253458)
柏谷 英樹 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 講師 (70328376)
杉村 光隆 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 教授 (90244954)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 高次視床核 / 視床後核群 / 大脳皮質体性感覚野 / 島皮質 / 痛覚 |
研究実績の概要 |
”痛み”を感じている人の脳では、視床、そして大脳皮質の体性感覚野と島皮質が、特に活発な活動を示す。体性感覚野が司る識別感覚と、島皮質で処理される不快感という、分割された2種類の情報が再び一つに統合されて、”痛み”の認知を生じると考えられているが、そのメカニズムは未だ不明である。本研究では、情報を統合するメカニズムとして、視床核の一つであるPosterior nuclei (PO, 視床後核群)の、特に尾側部のニューロンが、体性感覚野と島皮質の両方に 同時に出力し、シンクロ活動を誘発することで、2種類の情報が統合され、”痛み”として認知されるという仮説を検証する。 昨年度までに、HungaryのProfessor Acsadyと国際共同研究を立ち上げ、本研究で必要となる、光遺伝学・行動解析・電気生理学の技術を融合した実験技術を確立することができた。具体的には、マウスの特定の神経細胞に光活性化チャネルを発現するアデノ随伴ウイルスを感染させ、これを刺激するためのoptic-fiberと、神経活動を記録するための電極の埋入、そして、オンラインでマウスの行動を解析し、特定の行動をしたときに、自動的に光刺激が行われる、closed loop systemを完成させた。 今年度は、三叉神経脊髄路核ニューロンを光遺伝学により活性化し、痛みの神経経路を刺激したときに、高次視床核である視床後核群が発火しているか、そして、島皮質、第一次体性感覚野、第二次体性感覚野の神経活動が同期しているかを、確認する。これらが確認できた後に、島皮質、第一次体性感覚野、第二次体性感覚野のいずれかを、光遺伝学により抑制することにより、神経活動の非同期化を行い、それにより痛覚関連行動や、不快情動を抑制できるかどうか、検証を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、光遺伝学、行動解析、電気生理学を融合した、新しい実験系を立ち上げる必要がある。この高度な技術を習得するため、Professor Acsady (Thalamus lab, KOKI, Hungary) のラボと、国際共同研究を開始した。そして昨年度は、光遺伝学、行動解析、電気生理学を融合したclosed loop systemを立ち上げることができた。このclosed loop systemを用いた実験技術の実際の運用において、細かい問題が発生したため、再度Professor Acsadyのラボを訪問して技術交換を行う予定にしていたが、コロナウイルスがいまだ収束しないため、実験の遅れの原因となっている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で必要な実験技術は、ほぼ確立できたので、今後はこの技術を用いて、データを取得する予定である。マウスの三叉神経脊髄路核と、その投射先の一つである視床に、2種類のアデノ随伴ウイルスを注入することで、三叉神経脊髄路核から視床へ投射するニューロンだけに、光活性化チャネルを発現させることができた。このマウスの三叉神経脊髄路核を光刺激することで、痛みに関連した行動をマウスに引き起こすことができた。形態学的な解析により、三叉神経脊髄路核からの投射軸索が、視床後核群、髄坂内核群、視床後内側腹側核に分布することも確認した。これらの視床核から大脳皮質への投射軸索は、島皮質、第一次体性感覚野、第二次体性感覚野に分布していた。これらの形態学的なデータを基に、三叉神経脊髄路核ニューロンを光遺伝学により活性化し、痛みの神経経路を刺激したときに、高次視床核である視床後核群や、髄坂内核群の視床ニューロンが活動しているかどうか、そして、島皮質、第一次体性感覚野、第二次体性感覚野の神経活動が同期しているかを、確認する。これらが確認できた後に、島皮質、第一次体性感覚野、第二次体性感覚野のいずれかを、光遺伝学により抑制することにより、神経活動の非同期化を行い、それにより痛覚関連行動や、不快情動を抑制できるかどうか、検証を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究で必要な研究技術の確立のため、国際共同研究相手のProfessor Acsadyのハンガリーのラボを訪問し、技術交換や、意見交換を行う予定にしていた。しかし、コロナウイルスのために、訪問がかなわず、旅費交通費を次年度に持ち越した。また、少し研究が遅れており、その分の研究経費も次年度に持ち越すことになった。
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