• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2020 年度 実施状況報告書

インフラマソームによる新規炎症制御機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 19K10066
研究機関北海道大学

研究代表者

佐伯 歩  北海道大学, 歯学研究院, 助教 (70638345)

研究分担者 柴田 健一郎  北海道大学, 歯学研究院, 名誉教授 (50145265)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードインフラマソーム / IL-1β / ジアシルリポペプチドFSL-1 / gasdermin D
研究実績の概要

IL-1βは細胞内センサーであるインフラマソームにより活性化され、多くの場合、caspase-1依存的なネクローシス様の細胞死であるピロプトーシスにより細胞外へ放出される。我々はこれまで、Mycoplasma salivariumならびにMycoplasma pneumoniaeのNLRP3インフラマソーム活性化物質の一つであるリポタンパク質 /リポペプチドがマウスマクロファージにピロプトーシスを誘導せず、IL-1βの細胞外分泌を誘導することを明らかにした。本研究では、リポペプチドFSL-1がどのような機構で生きたマクロファージにIL-1β分泌を誘導するのかを明らかにすることを目的とした。近年、caspase-1により活性化されたgasdermin DのN末端領域が細胞膜に小孔を形成し、ピロプトーシスが誘導されること、さらに、生細胞からもgasdermin D小孔を介してIL-1βが分泌されることが報告されたことから、まずはgasdermin Dの関与を検証した。FSL-1はC57BL/6マウスより採取した骨髄由来マクロファージにIL-1βの産生を誘導し、本活性はgasdermin Dのノックアウトにより阻害されなかった。さらに本活性は、細胞膜透過性の阻害剤であるpunicalaginにより有意に阻害された。また、punicalaginはFSL-1の細胞質への局在を阻害しなかった。以上のことより、FSL-1により誘導される生きたマクロファージからのIL-1β細胞外分泌は、gasdermin D小孔によるものではなく、細胞膜透過性が関与していることが示唆された。本研究課題の解明により、未だ不明な点が多く残されているインフラマソームによる炎症制御機構の新たな一面が明らかとなり、多くの重篤な炎症性疾患の新規診断法や予防・治療法開発に寄与することが期待できる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

これまでの研究で、FSL-1により誘導される生きたマクロファージからのIL-1β細胞外分泌は、gasdermin D小孔によるものではなく、細胞膜透過性が関与していることが示唆され、論文発表を行った。

今後の研究の推進方策

1. 細胞死によらないIL-1βの細胞外分泌機構の解明
exosomeを介した分泌:LPSでプライミングしたB6BMMsをFSL-1で刺激後、反応上清からexosomeを単離し、IL-1βやインフラマソーム関連分子が含まれるかどうかをWB法で調べる。
2. 細胞外pyroptosomeによる炎症増幅機構の解明
(1) pyroptosomeの分離・精製:pyroptosomeをB6BMMsならびにヒトマクロファージ(THP-1細胞)の培養上清からPercollを用いた密度勾配遠心法で分離・精製する。(2) IL-1β産生誘導に関与する分子の同定:pyroptosomeによるIL-1β産生誘導に、どのようなインフラマソーム関連分子ならびにレセプターが関与しているかを調べる。(3) FSL-1のIL-1β産生誘導活性に及ぼす影響:LPSでプライミングしたB6BMMsを精製pyroptosome存在下あるいは非存在下でFSL-1刺激し、反応上清中のIL-1β量を調べる。(4) 細胞死誘導活性:上記(2)(3)で回収した反応上清中の乳酸脱水素酵素を測定する。(5) 貪食細胞と非貪食細胞に対する応答の違いを調べる。(6) 貪食後の細胞内動態: THP-1細胞をpyroptosome-GFPで刺激し、LysoTrackerならびに共焦点レーザー顕微鏡を用いてタイムラプス観察を行う。(7) In vivoでのサイトカイン産生誘導:B6マウス尾静脈からB6BMMs由来精製pyroptosomeを単独あるいはFSL-1と共存下で接種後、血中サイトカインを調べる。

次年度使用額が生じた理由

研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため、当初の見込み額と執行額は異なったが、研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め当初予定通りの計画を進めていく。また、学会がWeb開催となったため、旅費が不要であった。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2020 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Gasdermin D‐independent release of interleukin‐1 β by living macrophages in response to mycoplasmal lipoproteins and lipopeptides2020

    • 著者名/発表者名
      Saeki Ayumi、Tsuchiya Kohsuke、Suda Takashi、Into Takeshi、Hasebe Akira、Suzuki Toshihiko、Shibata Ken‐ichiro
    • 雑誌名

      Immunology

      巻: 161 ページ: 114~122

    • DOI

      10.1111/imm.13230

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Lipoprotein Extraction from Microbial Membrane and Lipoprotein/Lipopeptide Transfection into Mammalian Cells2020

    • 著者名/発表者名
      Hasebe Akira、Saeki Ayumi、Shibata Ken-ichiro
    • 雑誌名

      Methods Mol Biol

      巻: 2021;2210 ページ: 195~204

    • DOI

      10.1007/978-1-0716-0939-2_19

    • 査読あり
  • [学会発表] マイコプラズマ由来リポタンパク質・リポペプチドによるNLRP3インフラマソーム活性化におけるTLR2の役割2020

    • 著者名/発表者名
      佐伯 歩,引頭 毅,長谷部 晃,柴田 健一郎
    • 学会等名
      第62回歯科基礎医学会学術大会
  • [学会発表] The effects of Candida albicans oral ingestion on intestinal microbial flora2020

    • 著者名/発表者名
      長谷部 晃、佐伯 歩、柴田 健一郎
    • 学会等名
      第62回歯科基礎医学会学術大会
  • [学会発表] Candida albicans経口摂取が腸内細菌叢に及ぼす影響について2020

    • 著者名/発表者名
      長谷部 晃、佐伯 歩、柴田 健一郎
    • 学会等名
      第24回腸内細菌学会学術集会
  • [備考] 北海道大学大学院歯学研究院 口腔病態学分野 口腔分子微生物学教室

    • URL

      https://www.den.hokudai.ac.jp/saikin/index.html

URL: 

公開日: 2021-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi