昨年度までの研究から、Ni結合タンパク質であるCXCL4とNiの混合溶液を用いた舌下免疫療法([Ni + CXCL4] SLIT)によりNiアレルギーが抑制されることを明らかにしている。今年度はそのメカニズムの解明を試みた。CXCL4は等電点9.2のカチオン性タンパク質である。これに対し、粘膜表面は負に帯電している。このため、CXCL4存在下では舌下粘膜表面での[Ni + CXCL4]の保持、もしくは粘膜組織下へのNiの取り込みが増強されるのではないかと仮定した。そこで、[Ni] SLITもしくは[Ni + CXCL4] SLITを施したマウスの舌下粘膜を採取し、組織中のNi量を経時的に測定した。Ni量の測定にはNi特異的蛍光プローブであるNewport Greenを用いた。しかしながら、CXCL4存在下においても、舌下粘膜組織中のNi量に変化は認められなかった。このため、CXCL4によるNi-SLIT増強メカニズムの解明には異なるアプローチからの更なる解析が必要である。 昨年度、Ni特異的T細胞応答の測定系を試みた。具体的には、マウス脾臓より調整したTregを含まないCD4陽性T細胞(Non-Treg CD4)とマウス骨髄細胞より調整した樹状細胞(BMDC)をNi存在下で48時間共培養した結果、培養上清中のIL-2およびIFNγの有意な増加が認められた。今年度は、本測定系へのTreg添加の影響を解析した。その結果、Treg添加により培養上清中IL-2濃度の低下が認められた。しかしながら、[Ni] SLITもしくは[Ni + CXCL4] SLITを施したいずれのマウス由来のTregでも同程度のIL-2濃度の低下が認めらたことから、[Ni + CXCL4] SLITで誘導されたTregの機能解析には至らなかった。
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