研究課題/領域番号 |
19K10069
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
田沼 順一 新潟大学, 医歯学系, 教授 (20305139)
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研究分担者 |
山崎 学 新潟大学, 医歯学系, 助教 (10547516)
丸山 智 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (30397161)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 細胞診 / LBC / 舌がん / 前がん病変 / 発がん / Carcinoma sequence |
研究実績の概要 |
今回我々は,液状化検体細胞診(LBC)を用いて採取された検体を利用した,口腔扁平上皮癌の早期発見用新規診断用マーカーの検索を目的に2つの研究を行った。 (1)【動物実験の方法】4NQO誘発ラット舌癌発症モデルにLBCを用いることで,同一個体を継続的に観察し,正常から癌へと変化する過程で生じる細胞・組織学的ならびに,遺伝子変化を明らかにすることである。6週齢DAラットに4NQO水溶液を経口投与し,3週毎に口腔内写真と細胞を採取し,LBC標本を作製した。次にPapanicolaou染色を行い,ベセスダ分類にて診断をした。その後,DAラットは30週齢で屠殺し,舌粘膜病変と周囲粘膜を採取した。細胞診と組織を評価することで発癌過程における形態学的な変化を解析した。また,LBCの残液から抽出したRNAを用いてp53遺伝子の発現量の比較検討も行った。【結果】LBC標本は14週経口投与したラットの半数はLSILと診断した。20週ではHSILを認め,さらに投与25週ではSCCと診断した。組織も概ね細胞診と同様の結果を得た。またp53の免疫染色では19週と21週の陽性像に有意差が見られた。 (2)【ヒトの検体方法】2019年1月から当院を受診し,LBCを施行された計50例の解析を行った。これらに対し,c-MYCで免疫組織学的検討を加え,細胞質弱陽性,細胞質強陽性,核陽性の3パターンを評価し,染色陽性像様式の差違について解析した。【結果】NILMからLSILへ進行するにつれ,c-MYCでは陽性細胞の割合は全てのパターンで増加傾向にあり,中でもLSILとHSIL間で有意差があった。
【考察】1)と2)の本実験において,LBC法は口腔の上皮性異形成や扁平上皮癌の推定が可能だった。さらに,癌化する過程で生じる上皮細胞の形態学的変化ならびに分子生物学的変化をLBCの検体から経時的に捉えることが可能だった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度の研究計画書より,以下のことが進行中である。 1)『舌癌モデル動物による細胞診を用いた診断と試料採取』舌癌高感受性DAラットに4NQOを飲用水で発がん実験を行い,LBC法で検体を採取する。 同一個体で継続的に病変部を順次観察しながら,各個体を3週間隔で舌病変から採取をして標本を作製し診断する。Papanicolaou染色で標本作製し,専門医がベセスダシステムに従い,前癌病変であるLSHL・HSILを対象に正常と比較検討を行い,同時に遺伝子解析用のRNAの抽出を行う。 2)『ヒト舌癌の各発がん段階における細胞診・組織診・免疫染色・網羅的解析』各発がん段階における症例で,生検から手術材および術後の再発など同一患者の標本で, LBC法による細胞診のPapanicolaou染色や免疫染色(CK13・CK17・Ki67・p53)を100症例実施する。また先行研究で見出している候補遺伝子hnRNPK・NQO1も染色を行う。以上より, 2019年度計画書と比較して,大部分は進行中なので概ね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進する方策としては,網羅的解析(クリニカルシークエンス)である。 ヒト舌癌の各段階(過形成・上皮性異形成・上皮内癌・癌) 100症例の検体は,次世代シークエンス解析を行い,特異的遺伝子や発現の差異から見出す。また候補遺伝子解析と同様に免疫染色の標本で発現様式を比較し,未知の病理診断マーカーと分子標的候補を見出す。なお時間・費用および設備の関係上,次世代シークエンス解析は委託する。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外共同研究者であるイタリア国立がん研究センターへの研究打ち合わせに、3月渡航する予定でした。しかし、コロナの影響により、渡航が不可能となり、旅費等の使用額が残ってしまった。その助成金は、来年度に、渡航する際に使用する予定である。
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