研究実績の概要 |
本邦の口腔・咽頭領域の悪性腫瘍はWHO(2018)によると,罹患率は過去10年間で2倍以上増加し,年間8千名の死亡者と報告されているが,厚生労働省がん対策推進議会では“希少がん”に分類されているために広く国民に知られていないのが現状である.また有力なマーカーや治療薬が存在しない上に口腔がん検診などの予防対策も十分に対応されてなく,研究面でもモデル動物,解析および評価方法が未だに曖昧なままである. 申請者がこれまでの基盤B・C研究において開発・応用させた口腔がんモデル動物実験は,点(de novo癌や転移癌)をターゲットにしたもので,多段階発がんのメカニズムの解明に不可欠なヒト癌で多く見られる線(Sequence癌)に対して,継続的な病理組織像や分子生物学的解析に利用可能である,最近開発された液状検体化細胞診(LBC法)法を発展・応用させることにより,経時的に繋がるユニークな傍証を掴んだ. そこで,本研究では,正常から過形成・上皮性異形成・扁平上皮癌へと変化する過程の組織像や遺伝子変化を,LBC法を用いた最新の網羅的解析(次世代シークエンス・メタボロミクス解析:クリニカルシークエンス)により遺伝子全体を検索することで評価可能な新規発がん機構の解析へと展開させることが目的である. したがって, 我々が作製した口腔がん発生モデル動物をLBC法に応用すれば,発がん段階で屠殺せず継時的かつ同一検体内で細胞採取が可能であり,複数の標本作製や免疫染色および次世代シークエンスやメタボロミクス解析が同時に可能なことから早期診断用マーカーを発見することができ,さらに革新的な診断や分子標的療法が確立できるなどのブレイクスルーが期待できる.
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