研究成果の概要 |
口腔扁平上皮癌(OSCC)の発生は, 正常から上皮性異形成を辿ることが多く, これまでの口腔がん研究は,点(de novo)をターゲットにしたもので, ヒト癌で見られる多段階発がんの解明に不可欠な線(Carcinoma Sequence)を理解する解析方法が無かった. そこで本研究は, LBC法を口腔がん発生モデルに応用する事で, 同一検体から免疫細胞染色や遺伝子解析を可能にした. そしてこの結果から, Brd4とc-Mycが経時的及び早期段階(NILMとLSILの間)で発現量が上昇することは,口腔細胞診の判定の精度を向上させるだけでなく,口腔がん早期発見に有用なマーカーになると期待できる.
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
本邦の口腔がんは,過去10年間で2倍以上増加し,年間8千名の死亡者と報告されているが,厚生労働省がんでは“希少がん”に分類されているために広く国民に知られてなく,また有力なマーカーや治療薬がない上に口腔がん検診の予防対策も不十分なままである. そこで口腔がん発生モデル動物をLBC法に応用すれば,発がん段階で屠殺せず継時的かつ同一検体内で観察が可能である.また標本や免疫染色及び次世代シークエンスやメタボロミクス解析が可能となることから早期判定用マーカーを見出すだけで無く,革新的な診断や分子標的療法が確立でき,クリニカルシークエンスに繋がる個別医療などに対してもブレイクスルーが期待できる.
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