歯周病細菌Porphyromonas gingivalis(以下、ジンジバリス菌)はFim線毛およびMfa線毛とよばれる2つの線毛を産生する。ジンジバリス菌の線毛は宿主への定着因子としての働きとともに細菌どうしの共凝集にも関わる。我々は、それらの線毛タンパク質はリポタンパク質として菌の表面まで分泌され、菌体表面にあるジンジパインプロテアーゼにより主要線毛タンパク質であるFimAやMfa1のN末端側の限定分解により重合していくことを報告しており新規の5型線毛と命名した。この線毛タンパク質はジンジバリス菌のみならず腸内細菌であるBacteroides属にも存在し、同様にタンパク質のN末端シグナル配列はリポタンパク質の特徴を有している。本研究の目的はジンジバリス菌を用いてリポタンパク質の輸送機構についての詳細を明らかにすることである。 これまでに、大腸菌にて知られるリポタンパク質の輸送分子であるLolAの類似タンパク質を2種類見出し、ジンジバリス菌W83株を用いてその2種類の欠損株を作製し、33277株のfimA遺伝子をプラスミド性に発現したものの線毛は重合していた。したがって、これらのLolA類似タンパク質はリポタンパク質の輸送に関与しないと考えられた。次にリポタンパク質輸送機構に関わるタンパク質を見つける目的で、近位依存性ビオチン化酵素によるタンパク質相互作用解析法に取り組み、FimAのシグナル配列-AirID-Hisタグ配列の融合遺伝子発現系を作製した。ジンジバリス菌porT欠損株にて融合分子が発現できたものの特異的にビオチン化された分子は認められなかった。 これまでの解析から、リポタンパク質輸送分子は必須遺伝子である可能性がある。そこでfimA遺伝子のコンディショナル発現系を構築し、北里大学から分与された放線菌の小分子ライブラリーを用いてfimA遺伝子の発現軽減または重合阻害のスクリーニングを行った。
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