研究課題/領域番号 |
19K10073
|
研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
入江 太朗 岩手医科大学, 歯学部, 教授 (00317570)
|
研究分担者 |
衣斐 美歩 岩手医科大学, 歯学部, 特任講師 (30609665)
佐藤 泰生 岩手医科大学, 歯学部, 講師 (40244941)
深田 俊幸 徳島文理大学, 薬学部, 教授 (70373363)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 唾液腺腫瘍 / 腫瘍組織発生 / PLAG1 / 腺房細胞 / 幹細胞性 |
研究実績の概要 |
不死化されたヒト正常唾液腺細胞株(腺房細胞(NS-SV-AC)および導管上皮細胞(NS-SV-DC))にPLAG1を過剰発現させ、salisphere cultureを行い、唾液腺構成細胞への分化および幹細胞的性格の獲得について比較・検討を行った。その結果、PLAG1は導管細胞の唾液腺の各構成細胞への分化には大きな影響を示さず、一部の唾液腺組織幹細胞マーカーの発現を亢進させたのみであったが、腺房細胞においては管腔側細胞への分化を亢進するとともに多能性幹細胞マーカー(NANOG)や複数の唾液腺組織幹細胞マーカー(LGR5, THY1)の発現を増強することが明らかとなった。さらにPLAG1を過剰発現させた際の腺房細胞と導管細胞における転写産物の変化をCAGE法による遺伝子発現解析と遺伝子オントロジー解析を用いて各々のmockと比較したところ、PLAG1は腺房細胞においては、癌関連あるいは幹細胞関連のパスウェイに影響を及ぼすことが示唆された一方で、導管細胞においては主に癌関連のパスウェイに影響を及ぼすことが示唆された。これらの結果からPLAG1が細胞種特異的に働くということについては、腺房細胞と導管細胞の幹細胞/前駆細胞のエピジェネティックな状態の違いによるものであることが文献的な考察から示唆されるが、唾液腺腫瘍の組織多様性が腫瘍細胞の由来の違いに基づくものであることを反映した結果と解釈することもできるかもしれない。PLAG1が正常唾液腺細胞において細胞腫特異的に幹細胞的性格を増強することについては、PLAG1がヒト正常唾液腺腺房細胞の幹細胞的性格を増強することにより唾液腺腫瘍の組織発生に関わることが示唆される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Zip10-EGFP-Ires-CreERT2ノックインマウスの使用を予定していたが、帝王切開による微生物学的クリーニングが必要となったため、進捗状況に若干の遅れが生じている。現在クリーニング中であり間もなく使用可能となる状況にある。次年度はin vivoの解析の進捗をさらに早めることとする。
|
今後の研究の推進方策 |
令和2年度はin vivoの実験の推進を図る。 ①亜鉛トランスポーター発現細胞の系譜追跡を可能とする唾液腺腫瘍組織発生マウスの作製:亜鉛トランスポーター陽性細胞のみにPlag1遺伝子の過剰発現を引き起こし、唾液腺腫瘍組織発生を時期特異的に生じさせうるモデルマウスを作製する。我々が作製したRosa26-Plag1コンディショナルノックインマウスと既に岩手医科大学動物研究センターに移設が完了し現在クリーニング中のZip10-EGFP-Ires-CreERT2ノックインマウスの交配によりZip10-EGFP-Ires-CreERT2/Rosa-z-Plag1-EGFPを作製する。 ②上記のマウスにより誘導された唾液腺腫瘍の病理組織学的検索:タモキシフェン投与後から腫瘍塊形成まで経時的にサンプルを採取し病理組織学的解析を行う。 ③亜鉛トランスポーターが唾液腺腫瘍組織発生において根本的に重要であることの直接的検討:深田らが既に作製済の亜鉛トランスポーターコンディショナルノックアウトマウス(Zip10floxマウス)、Rosa26-Plag1コンディショナルノックインマウス(Rosa-CAG-z-Plag1-EGFP)とZip10-EGFP-Ires-CreERT2を交配し、Zip10flox/Rosa-z-Plag1-EGFP/Zip10-EGFP-Ires-CreERT2マウスを作製し、亜鉛トランスポーターノックアウト状態下では唾液腺腫瘍の組織発生が起こり得ないのかを検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
使用予定の遺伝子改変マウスが微生物学的クリーニングが必要となり、それを用いた実験に若干の遅れが生じたため、それに要する予定であった研究費を次年度使用額に繰り入れることとした。
|