研究課題/領域番号 |
19K10074
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研究機関 | 奥羽大学 |
研究代表者 |
加藤 靖正 奥羽大学, 歯学部, 教授 (50214408)
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研究分担者 |
前田 豊信 奥羽大学, 歯学部, 准教授 (10382756)
鈴木 厚子 奥羽大学, 歯学部, 講師 (90405986)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 酸性細胞外pH / メタボローム |
研究実績の概要 |
卵巣癌細胞株SKOV3細胞とその酸性pH馴化株SKOV3A細胞、また、口腔扁平上皮癌細胞株Ca9-22細胞とその酸性pH馴化株Ca9-22A細胞をそれぞれpH 7.4で培養し、pH 6.5で24時間作用させてメタボローム解析を行った。その結果、pH 7.4での親株を基準とした代謝産物の増減については、癌細胞の由来による差異は認められなかった。pH 7.4での培養ではSKOV3もCa9-22細胞共に、酸性pH馴化株との比較では明確な違いは見られなかった。一方、それぞれの細胞をpH 6.5で24時間処理すると、解糖系は代謝産物の亢進が見られた。シトルリンやオルニチンは、親株よりも酸性pH馴化株で高く、親株と酸性pH馴化株共にpH 6.5処理により上昇した。その他の代謝系では、親株と酸性pH馴化株で大きな差異はなく、pH 6.5処理で低下した。pH 6.5での処理による解糖系の亢進に対応して、グリコーゲン合成はpH 6.5での処理により低下した。ピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ1(PDK1)の活性化によるピルビン酸デヒドロゲナーゼ活性阻害に起因するアセチルCoAへの代謝は全ての条件下で低下しており、グルコースのほとんどは好気的解糖により乳酸へ代謝されていが、面白いことに、クエン酸やオキサロ酢酸の代謝産物レベルはアセチルCoAレベルより300倍~600倍を示した。ミトコンドリア内のクエン酸は、トランスポーターを利用してミトコンドリア外へ移動すると、アセチルCoAとオキサロ酢酸へ代謝され、アセチルCoAは脂肪酸合成に利用されることが明かとなっている。酸性pHにより脂肪滴の増加が観察されていた現象として、クエン酸から脂肪酸合成に利用されている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID19による行動制限のため。
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今後の研究の推進方策 |
別の細胞株によるメタボローム解析を追加し、これまで得た結果の普遍性について検討する。PDK1やPDHの遺伝子発現について検討し、代謝のreprogramingについて検討する。ATPクエン酸リアーゼの発現レべルを調べるとともに、ATPクエン酸リアーゼのノックダウンを行い、細胞の脂質合成、運動能などを調べ、悪性化との関連性について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID19による行動制限のため、消耗品の購入が少なかった。予定されていた国際学会が延期となり、参加費や旅費の支出が無かった。
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