研究課題/領域番号 |
19K10074
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研究機関 | 奥羽大学 |
研究代表者 |
加藤 靖正 奥羽大学, 歯学部, 教授 (50214408)
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研究分担者 |
前田 豊信 奥羽大学, 歯学部, 准教授 (10382756)
鈴木 厚子 奥羽大学, 歯学部, 講師 (90405986)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 酸性細胞外pH |
研究実績の概要 |
癌の組織内における細胞外環境によりがん細胞の性質が調節されていると考えられている。がん細胞周囲の微小環境として、がん細胞自身の代謝による微小酸性環境がある。私たちは、酸性pHががん細胞の転移性を促進する微小環境因子として初めて報告し、その後の知見をまとめ2013年にCancer Cell Internationalに掲載された総説は、2022年3月までにGoogle Scholarによる引用数が1000を超えていることも、この領域の注目度の高さを証明しているといえる。昨年行ったメタボローム解析の結果では酸性pHに順化した細胞は、アセチルCoAかせ脂肪酸の合成が活発であることを示していた。そこで、卵巣がん由来OV90細胞とSKOV3細胞とそれぞれ酸性pH耐性株(OV90A、SKOV3A)における脂肪細胞分化関連遺伝子の発現について検討した。C/EBPα遺伝子発現は、酸性pH順化株2株で親株よりも低下していた。逆にFABP4発現は、酸性pH順化株2株で親株よりも上昇していた。PPARγ2発現はOV90よりもOV90A細胞で上昇していたが、SKOV3細胞、SKOV3A細胞ではほとんど発言していなかった各細胞を一過性に酸性pH刺激を行うと、各遺伝子発現は変化しないかまたは低下した。これまでにC/EBPαは卵巣がんでの生存、増殖、上皮間葉系移行、転移を抑制するとの報告や、FABP4の発現上昇はferroptosisを抑制、PRKAγ2はがん部で発現が上昇あるいはタンパク質の半減期が延長するなどの報告があり、酸性環境への馴化がこれらの遺伝子は限に関与することが示唆された。また、一過性の酸性環境に対する反応と、酸性pHへの馴化は逆の反応を示したことから、この酸性pHに対する反応性の違いが、がん組織内での不均一性に貢献しているものと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
COVID19による行動制限のため。
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今後の研究の推進方策 |
代謝酵素の発現などを調べ、メタボローム解析の理解につなげる。また、酸性環境への馴化と一過性の酸性環境への曝露での反応性の違いについて検討し、がんの不均一性の理解につなげる。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID19による行動制限により研究計画を終了できなかったため。
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