TREM2 は LPS による細胞内シグナルを抑制的に調節すると考えられているが、詳細な調節機構は明らかになっていない。そこで、マウスマクロファージの細胞株である RAW264.7 細胞の Trem2 mRNA の発現を siRNA で抑制し、LPS 刺激後の34種類のケモカインの遺伝子発現を網羅的に解析した。LPS 刺激後、2時間で誘導されるケモカインは13種類あり、そのうち、Trem2 siRNA で発現が抑制されたのは5種類であった。LPS によるケモカインの誘導においては Trem2 は一部で促進的に働いていると考えられる。 マクロファージの TREM2 は LPS により発現が抑制される事が知られている。そこで、RAW264.7 細胞の TREM2 の発現を Flow cytometry で確認したところ、LPS 刺激後2時間で細胞膜上の TREM2 はほとんど消失していた。次に、培養上清中の TREM2 を ELISA で測定したところ、LPS 刺激により、TREM2 濃度がコントロールの5倍に増加していた。これらの事から、LPS 刺激により細胞膜上から消失する TREM2 の一部は細胞外に遊離していると考えられる。 細胞外に遊離した TREM2 が LPS によるケモカインの誘導に関わっているのかを調べるため、TREM2 の細胞外ドメインの組換えタンパク質を培地に添加し、LPS でマクロファージを刺激した。すると、Trem2 をノックダウンした細胞において発現が抑制された5種類のケモカインの内、CXC ケモカイン2種類の発現が組換え体 TREM2 により回復した。 これらの結果は、細胞膜から遊離した TREM2 もマクロファージの LPS によるケモカイン発現に一部で関わっている事を示唆している。
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