研究課題/領域番号 |
19K10076
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研究機関 | 明海大学 |
研究代表者 |
大森 喜弘 明海大学, 歯学部, 教授 (50194311)
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研究分担者 |
廣井 美紀 明海大学, 歯学部, 講師 (30419717)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | インターフェロン / 口腔癌細胞 / インターフェロン耐性 / 細胞増殖 / メチル化阻害剤 / ヒストンメチル期転移酵素阻害剤 / ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤 |
研究実績の概要 |
口腔癌細胞を含めた悪性腫瘍に対する治療法として免疫チェックポイント阻害剤による免疫療法が注目されている。しかしその有効性に関しては治療効果の認められない症例もあり、その原因の一つとして癌細胞の宿主免疫系からの回避が挙げられる。この免疫療法の効果を阻む原因の一つは、癌細胞の持つ抗腫瘍免疫機構に対する不応答や抑制である。この癌細胞の免疫系からの回避機構としては、MHCクラスIの発現低下、インターフェロン(IFN)誘導性ケモカインCXCL9, CXCL10の発現抑制、PD-L1などのT細胞の活性化を抑制する分子の発現などが知られているが、その耐性機構は癌腫により異なり、メカニズムについても未だ不明な点が多い。 我々はこの癌細胞の免疫系から回避機構として口腔癌細胞のIFN耐性に着目した。本研究ではそのIFN耐性機構を解明するため、IFN耐性を示す口腔癌細胞を用いて、細胞増殖、細胞死に関わるIFN応答遺伝子のメチル化による遺伝子抑制の分子機構の解明を目指す。またメチル化阻害剤による遺伝子抑制の解除とIFNによる免疫エピゲノム併用療法の有効性についても検討を行う。昨年度の研究結果からDNAメチル基転移酵素阻害剤、およびヒストンメチル基転移酵素阻害剤の前処理による細胞増殖に及ぼす影響について検討し、これらの阻害剤の処理により供試した細胞株の増殖が抑制された。しかしながらIFN耐性口腔癌細胞において、これら阻害剤とIFNとの併用処理によりIFN耐性は解除されなかった。メチル化されたDNA領域には, メチル化CpG結合タンパク質であるMeCP2が結合し, ヒストン脱アセチル化酵素(HDACs)と複合体を形成し, ヒストンを脱アセチル化して転写抑制状態をさらに強化していることが知られている。そこで本年度ではDNAメチル化阻害剤 とHDAC阻害剤との併用処理によりIFNに対する耐性が解除されるか検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
インターフェロン耐性口腔癌細胞株を用いて、DNAメチル基転移酵素阻害剤 (5-Aza-deoxycydine:5-Aza-dC, RG108)、およびヒストンメチル期転移酵素阻害剤 (3-deazaneplanocin A: DZNep)の前処理による細胞増殖に及ぼす影響について検討を行った。 その結果、5-Aza-dCは濃度依存的にインターフェロン耐性口腔癌細胞株の細胞増殖を抑制した。しかしIFNとの併用処理において細胞増殖抑制作用における顕著な増強効果は認められなかった。メチル化DNA領域にはヒストン脱アセチル化酵素 (HDAC)を含む転写抑制複合体がリクルートされることから、DNAメチル化とHDACの両者の抑制によりIFN誘導性遺伝子の発現が抑制されているのではないかと考え、DNAメチル化阻害剤とヒストン脱アセチル化酵素 (HDAC)阻害剤 (trichostatin A: TSA)との併用処理における作用について検討を行った。その結果、低濃度の5-Aza-dCとTSAとの併用処理により単独処理に比べ、顕著な細胞増殖の抑制作用が認められたが、IFNとの併用によるさらなる抑制作用の増強は認められなかった。この5-Aza-dCとTSAとの併用処理による増殖抑制の分子機構について検討したところ、細胞増殖の抑制作用は、アポトーシスだけでなくG2/M期での細胞周期の停止によるものであることが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究ではインターフェロン耐性口腔癌細胞株 (Ca9-22)およびインターフェロン感受性口腔癌細胞株 (HSC-2)を用いて検討を行い、メチル化阻害剤、HDAC阻害剤の併用効果について検討を行い、単独処理に比べて併用処理により顕著な細胞増殖抑制作用が認められた。しかしメチル化阻害剤、HDAC阻害剤の併用によってもCa9-22細胞のIFN耐性は解除されなかった。今後の検討課題として、Ca9-22細胞、HSC-2細胞ではこれらのメチル化阻害剤、HDAC阻害剤 に対する感受性も異なることからその違いに関する分子機構についても検討を行う予定である。またメチル化阻害剤、HDAC阻害剤の併用による細胞増殖抑制作用は、アポトーシスだけでなく細胞周期の停止も関わっていることから、これらの阻害剤により二本鎖DNA切断が関わっているか、ヒストンバリアントH2A のリン酸化について検討を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で研究活動が一時中断したため、購入予定の試薬の発注が遅れ残額が生じた。今年度は遅延している研究計画を遅滞なく進める予定である。
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