研究課題
歯周病は歯を喪失する最も大きな要因となるだけでなく,誤嚥性肺炎や糖尿病など様々な全身疾患の誘因となることも明らかとなってきた。したがって,歯周病予防は口腔のみならず,全身の健康維持にも重要との考え方が広まっている。しかし,歯周病の発症機序について病因論は未だ確立されていない。近年、歯周病の発症には、宿主の免疫機能の低下が最も重要であるとの考え方が主流となり、細菌以外の微生物感染、すなわち宿主の免疫低下を引き起こすウイルス、特にEBVや CMVの関与が注目されている。実際に、病気の進行に伴い患部から両ウイルスが検出されることが世界中から報告されている。口腔には細菌のみならず、多くのウイルスも存在しているが、ウイルスは扱いが困難なため、歯学分野ではこれまでウイルス研究が行なわれてこなかった。ウイルスの関与という全く新しい視点に立った概念の構築が、歯周病の理解と新しい予防・治療法開発のブレークスルーとなる可能性がある。今年度は、 歯周病患者由来のヒト歯肉線維芽細胞とマウス単球由来 RAW264.7 細胞を用い、EBVとCMVが歯周病の進行において重要な役割を担う炎症性サイトカインの産生と破骨細胞の分化に及ぼす影響を検討した。その結果、歯肉線維芽細胞に EBVとCMVを添加した結果、両ウイルス共 IL-6 と IL-8 の産生を強く誘導したが、その作用は EBV が顕著であった。さらに、EBV はNF-κBを活性化するとともに、量依存的に RANKL 誘導性の破骨細胞形成を促進したが、CMV においてはそのような作用は認められなかった。また、ヒト化マウスを用いた実験から、歯周病と病態がよく似ている関節リウマチモデルのマウス関節部から、EBVと破骨細胞が検出されることを見出した。本研究の成果は、新たな歯周病の治療戦略を考えるうえで重要な基礎的知見を提示していると考えられる。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
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