研究課題
口腔がんの多くは臨床的に白板症あるいは紅板症と呼ばれる前がん病変が進展して発生する。前がん病変の確定診断は病理検査でなされ、癌化のリスクすなわち悪性度は、異型性と呼ばれる組織学的な形態異常の程度に基づきグレード化して判定される。しかし定量的な基準がないことから、その判断は診断者によるばらつきが大きいことが問題であり、検査結果の標準化が望まれる。そこで、口腔がんと前がん病変の病理組織像をAIを用いて解析し、口腔病理診断への応用の可能性を検討した。組織画像解析では小領域の画像(パッチ)に分割して分類する戦略が適しているが、通常使用される正方形状のパッチでは適切な大きさの設定が難しい。そこで、上皮全層を含む短冊形状のパッチを用いた。解析対象は舌に限定した。舌部分切除術材料200症例を用い、代表割面のバーチャルスライドで上皮を[正常、低異型度異形成、高異型度異形成、がん]の4クラスに分類し、そこから60x1000ピクセル大のパッチ画像を合計約40万枚切り出し、訓練用データセットとした。評価データに対する正解率は約75%であった。このAIを用いて、舌の生検100症例の病理組織画像を入力しヒートマップを描いてAIの予測を可視化した。ヒートマップをみて下した診断と、実際の組織像をみて診断した結果のおよそ9割が一致し、AIが組織像を、異型性を反映した写像に、正確に変換することが示された。ヒートマップの解釈は病理組織の知識を要せず、観察者によるばらつきも少ないと考えられ、口腔がん、前がん病変の病理検査の標準化に有効であると考えられた。
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Journal of Oral and Maxillofacial Surgery, Medicine, and Pathology
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10.1016/j.ajoms.2021.12.008