研究課題/領域番号 |
19K10085
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
竹内 洋輝 大阪大学, 歯学部附属病院, 講師 (40572186)
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研究分担者 |
久保庭 雅恵 大阪大学, 歯学研究科, 准教授 (00303983)
天野 敦雄 大阪大学, 歯学研究科, 教授 (50193024)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 歯学 |
研究実績の概要 |
疫学では、病因・環境要因・宿主要因の3つのバランスが崩れた時に疾病が発生すると考えられている。本研究では、人類で最も患者数の多い感染症の1つである歯周病発症に係る宿主要因の探索を行う。 歯肉を覆う上皮細胞が形成する上皮バリアは、宿主が口腔内細菌と拮抗状態を維持するために重要な役割を果たしている。これまで我々は、歯周病菌Porphyromonas gingivalis が歯肉上皮細胞のタイト・ジャンクション関連タンパク質を特異的に分解しバリア機能を低下することで、細菌の膜成分であるlipopolysaccharide およびpeptidoglycan を上皮下へ透過させることを報告した。一方、歯周病を随伴する症候群の責任遺伝子と歯肉上皮のバリア機能の関連については、不明な点が多い。 令和2年度は、歯周病を随伴する症候群の内、パピヨン・ルフェーブル症候群および糖原病Ib 型の責任遺伝子をノックダウンまたはノックアウトした歯肉上皮細胞を用い、歯肉上皮の3次元培養法を確立した。この歯肉上皮モデルを共焦点顕微鏡で3次元的に観察すると、特定のタイト・ジャンクション関連タンパク質の局在異常を認めた。この結果より、パピヨン・ルフェーブル症候群および糖原病Ib 型の責任遺伝子が、タイト・ジャンクション関連タンパク質の細胞内輸送に関与することが示唆された。 この技術により、パピヨン・ルフェーブル症候群および糖原病Ib 型を模した疾患モデル組織を研究対象とすることが可能になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
<到達度目標> 短期目標は、歯周病を随伴する症候群の責任遺伝子をノックダウンまたはノックアウトさせた歯肉上皮細胞を作成し、形態学的に観察することである。その結果、本研究計画の2年目に、2つの症候群の責任遺伝子をノックアウトまたはノックアウトさせた歯肉上皮細胞を用いて歯肉上皮モデルを作成し、タイト・ジャンクション関連タンパク質の局在を共焦点顕微鏡でZ軸方向に観察する方法を確立することができた。 <原因・目標解析> 令和2年度の目標は本研究課題の達成のために必要であり、困難度も適切であった。 <課題検討> Crsiper Cas9 システムを用いたノックアウト技術に係るオフターゲット効果を除外するため、ターゲットとなる遺伝子配列を比較検討する。また、標的遺伝子のノックアウト細胞への入れ戻し実験(レスキュー実験)につき、歯肉上皮細胞へ遺伝子導入するベクターの選別を行い、今後の実験のアーティファクトを可及的に除去することが必要である。また、免疫染色法の最適化のため、歯肉上皮モデルの固定、permeabilization、抗原賦活化処理等につき更なる条件検討を行う。共焦点顕微鏡を用いた歯肉上皮モデルの3次元撮影は、数分間レーザーを組織に照射するため、免疫染色に用いた蛍光シグナルが退色し易い。この退色を防ぐため、レーザー強度およびZ軸方向の断層画像の間隔等の撮影条件の検討を行う。さらに、歯肉上皮モデルの作成には大量の培養培地が必要となるため、培養条件のスモールスケール化を検討する。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度の目標は、令和2年度に作成することができなかった他症候群の責任遺伝子をノックダウンまたはノックアウトした歯肉上皮細胞を用い、歯肉上皮モデルを作成することである。また、令和2年度に作成したパピヨン・ルフェーブル症候群および糖原病Ib 型の歯肉上皮モデルを用い、lipopolysaccharide およびpeptidoglycan の上皮透過性の多寡を調べる。
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