研究課題/領域番号 |
19K10087
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
苔口 進 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (10144776)
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研究分担者 |
横田 憲治 岡山大学, 保健学研究科, 教授 (00243460)
村上 純 岡山大学, 歯学部, 博士研究員 (40362983)
有元 佐賀惠 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (90212654)
渡辺 朱理 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 講師 (80585026)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 口腔細菌 / 発がんリスク |
研究実績の概要 |
ピロリ菌による胃がんや腸内細菌叢の変化による大腸がんのように慢性細菌感染症ががん発症リスクに関わることが明らかにされている。口腔 慢性細菌感染症(う蝕や歯周病)も全身健康や心臓疾患、肺炎、糖尿病などの重篤な疾患にも深く関係していることが明らかになってきている 。近年、口腔がん、食道がん、大腸がんの病巣から各種口腔細菌種が分離されており、ある特定の口腔細菌種ががん発生にも関わるのではないかとの仮説が立てられている。しかしながら、口腔細菌種のがん発症に関わる細菌由来の因子(変異原性)やがん発症メカニズムは今のところ不明のままである。そこで、本研究では以下のような課題について研究を進めることを計画した。 1)昨年度から引き続いて、がん病巣から分離されるFusobacterium nucleatumについて変異原性活性試験を行った。培養Fusobacterium nucleatum菌体からsonic extractおよびdistilled water extractを調製して、新しい高感度で簡便な細菌変異原性試験(エイムス試験法)を駆使して調べた。その結果、Fusobacterium nucleatum菌体成分には変異原性は認められなかった。引き続き、Streptococcus anginosusについて検討を進めている。 2)ピロリ菌の持つ変異原性因子と主な口腔細菌種についてゲノム情報から比較検討を進めているが、いまだ変異原性の因子を特定には至っていない。 3)アメリカの研究者と共同で各種口腔細菌種についてゲノム解析を進めている。発がん、変異原性に関わる因子を遺伝子レベルから特定したい。 4)各種口腔細菌の巣となる口腔バイオフィルム、不溶性グルカンを分解する酵素を産生するFlavobacterium種を得た。その酵素遺伝子の特定を進め、口腔疾患の予防に繋げたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
理由 令和2年は全国的な新型コロナウイルス蔓延のため岡山大学でも春先から、大学への入構禁止また実験中止が秋まで続いた。そのため、令和2年は実験系に遅れが出たと思う。 さらにゲノム解析を依頼しているアメリカではロックダウンが続き、オンラインでの研究打ち合わせもままならなかった。 目標に掲げた研究実施課題のうち、Fusobacterium nucleatum(ATCC25586)菌体のsonic extract(SK-1)およびdistilled water extract(SK-2)についてそれぞれの変異原性をエイムス試験により評価したが、変異原性は認められなかった。その研究結果については第27回日本がん予防学会総会 がん予防学術大会2020米子(会期:2020年09月15日(火)~16日(水)会場:鳥取(米子コンベンションセンター))にてオンライン発表を行った。 2)口腔細菌種の中からPorphyromonas gingivalis、Capnocytophagaなどについて岡山大学病院バイオバンクの協力を得て細菌ゲノムシーケンスを行い、その解析データはアメリカRutgers School of Dental MedicineのCugini博士の協力のもと解析を進めている。発がん、変異原性に関わる因子を遺伝子レベルから特定したい。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年は全国的な新型コロナウイルス蔓延のため、緊急事態宣言が発出されて、大学研究室への入室禁止、新たな実験、研究開始は原則禁止であったが、これまでの研究計画を継続するとともにその成果を基に発展させたい。 1)研究分担者、有元らが確立した高感度のエイムス試験を用いて、口腔がん病巣から分離されているStreptococcus anginosusなどの他の口腔細菌種についても、その菌体成分の変異原性を調べる。 2)がん病巣から分離される口腔細菌種についてゲノム解析を進めて、得られたゲノム情報については、Microbiology Resource Announcementsなどの国際学術誌に投稿したい。バイオインフォマティクスを駆使して変異原性が確認できているピロリ菌(Helicobacter pylori)と比較して発がん、変異原性に関わる因子を遺伝子レベルから特定したい。 3)口腔細菌種が生息する口腔バイオフィルムの主な構成成分であるα1,3グルカン(不溶性グルカン)を分解する酵素を産生するFlavobacterium EK-14につい て不溶性グルカン分解酵素をコードする遺伝子を特定した。Flavobacterium種が産生する不溶性グルカンを分解する酵素遺伝子を特定した。山形大学工学部、矢野成和先生の協力を得て遺伝子クローニング、リコンビナント酵素発現を行いたい。口腔バイオフィルムを分解することでそこに巣くう口腔細菌の量を減少させ、発がんリスク軽減に繋げたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス蔓延のため、参加を予定していた学会がオンライン開催となり、また、口腔細菌種について現在進めているゲノム解析の結果について国際雑誌へ報告を予定していたが、今年度は報告できなかったため、次年度使用額が生じた。使用計画としては、次年度、細菌のゲノムや変異原活性の解析に必要な物品費や国際雑誌への掲載料等に充当する。
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備考 |
Aggregatibacter actinomycetemcomitansやPorphyromonas gingivalisをはじめ口腔細菌種のゲノム解析でこれまで共同研究を行ってきている。
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