研究課題/領域番号 |
19K10089
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
向下 寿子 (古庄寿子) 広島大学, 医系科学研究科(歯), 助教 (00634461)
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研究分担者 |
宮内 睦美 広島大学, 医系科学研究科(歯), 教授 (50169265)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | P.gingivalis / TLR2 / 早産 |
研究実績の概要 |
まず、動物実験では、雌性TLR2ノックアウトマウス(TLR2KOマウス)を2群に分け、一方をP.gingivalis(P.g.)歯性感染させたTLR2KO感染群として作成し(TLR2KO-P.g.(+)群)、6週後、根尖部への炎症の波及後に雄性TLR2ノKOマウスと交配し、在胎日数を調べた。前年では、サンプル数が各群3匹ずつであったが、さらにサンプル数を増やし、各群6匹でデータを比較した。 その結果、TLR2KO非感染群(TLR2KO-P.g.(-)群)と比較すると、TLR2KO-P.g.(-)群の在胎日数が20.16日であったのに対し、TLR2KO-P.g.(+)群の在胎日数は20.5日であった。同様に作成した野生型マウス(WTマウス)の結果(WT非感染群(WT-P.g.(-)群):20.5日、WT感染群(WT-P.g.(-)群):18.25日)と比較し、TLR2KO-P.g.(+)群では早産が起こらないことが示された。 細胞実験では、ヒト胎盤細胞(HTR-8)に抗TLR2抗体前処理を行うことで、P.g.-LPSの刺激により発現上昇する早産促進因子(Gal-3、TNF-α、COX-2、IL-8)が抑えられるか、検討を行った。早産促進因子(Gal-3、TNF-α、COX-2、IL-8)のmRNA発現上昇の抑制は見られなかった。 広島大学病院において出産した妊婦の出産直前の血清のP.gingivalisの線毛(Fimbriae:Fim)にはType1~5まである。特に病原性が高いとされるのが Type2および4である。研究室では、歯科を受診した患者172名のFim type1~5の血清抗体価を測定している。測定結果からType2・4の血清抗体価の低い群と高い群各20例を選び、出産後の胎盤の標本を作成し、Gal-3、TLR2の免疫染色を行った。発現の違いに明らかな差は見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
動物実験においてP.g.菌の培養方法に関し、他大学の先生から推奨する方法を教えていただいた。細菌自体の活性が違うことが分かったため、再度、在胎日数、胎盤、血清のサンプルを採取しなおす予定である。すでにサンプル採取の予定は組んであり、令和3年度内に解析まで終了する予定である。 細胞実験において、P.g.を実際に感染させる実験のサンプルを回収していたが、上記の培養方法を変更するにあたり、再度、実験を組みなおしているところである。新しい菌の培養方法により採取したP.g.をヒト胎盤細胞に感染させることで、以前には見られなかった顕著な反応も認められたため、変更した培養方法を用い、今後の研究を進めていく予定である。 出産後の胎盤のサンプルでは、出産促進因子、Galectin-3、TLR2の発現を比較することは難しい可能性がある。遺伝子発現、タンパク質の測定を試みる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
動物実験において、再度、在胎日数、胎盤、血清のサンプルを採取しなおし、解析まで終了する予定である。 細胞実験において、P.g.-LPS刺激による早産促進因子(Gal-3、TNF-α、COX-2、IL-8)の遺伝子発現ではTLR2経路が重要ではない可能性が出てきた。P.g.死菌、P.g.生菌刺激により、抗TLR2抗体により前処理したヒト胎盤細胞での、早産促進因子の遺伝子発現、タンパク質の測定を進める予定である。また、胎盤に存在するその他の細胞も使用し、同様の実験を行うことを検討している。 出産後の患者胎盤のサンプルでの、出産促進因子、Galectin-3、TLR2の組織学的検討を行い、結果によっては、出産促進因子、Galectin-3、TLR2の遺伝子発現、タンパクレベルの測定を試みる予定である。サンプル数を増やす予定である。
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