1)広島大学病院を受診した妊婦のうち、歯周病菌P.gingivalis(P.g.)の線毛(Fim)のうち病原性が高いとされるtype2およびtype4の血清抗体価を測定し、低値群と高値群に分け、検討を行った。両群の出産後胎盤から抽出したmRNAを用い、PCRを用い検討を行ったが、TLR2mRNA発現に差はみられなかった。 2)動物実験では、まず、野生型マウスの妊娠後15日の胎盤ではP.g.感染処置の有無にかかわらずTLR2を発現していることを確認した。雌性TLR2ノックアウトマウス(TLR2KOマウス)を2群に分け、一方をP.gingivalis(P.g.)歯性感染させたTLR2KO感染群として作成し(TLR2KO-P.g.(+)群)、6週後、根尖部への炎症の波及後に雄性TLR2ノKOマウスと交配し、妊娠15日後のサンプル(顎骨、胎盤)を回収した。顎骨のサンプルでは、根尖病巣の形成、および根尖部のP.g.の存在を確認した。胎盤のDNAを回収し、P.g.の存在を確認した。また、胎盤から抽出したmRNAを用いた検討では、TNF-αmRNA発現が抑制される傾向を確認した。 3)細胞実験では、ヒト胎盤細胞(HTR-8)を用いた。細胞に抗TLR2抗体前処理を行うことにより、P.g.-LPSの刺激で発現上昇がみられる早産促進因子のうち、TNF-α、COX-2発現を抑制していた。また、抗TLR2抗体前処理を行った細胞に対し、P.g.生菌を感染させると、早産促進因子のうちTNF-αの発現が抑制されていた。 P.gingivalis歯性感染により引き起こされる早産に、TLR2経路は関係しており、TLR2経路を阻害することでTNF-αの発現を抑え、早産予防につながる可能性が示唆された。
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