研究実績の概要 |
好中球分化のモデル細胞HL-60細胞について,野生型とAk2ヘテロノックアウトを用いて,全ゲノム解析と分化誘導時の遺伝子発現解析結果の分析を行なった。 全ゲノム解析では,レファレンス配列との比較からindel変異はいずれも約6万箇所検出された。 一方,好中球分化誘導実験では,10 マイクロモルATRAで1日,2日,4日間処理して好中球分化を誘導し,そこから得られた全RNAを用いてマイクロアレイ解析の分析を行った。得られたデータのin silico解析から以下のような所見が得られた。1 好中球分化誘導前後で発現変動があった遺伝子群のGO解析から,細胞をATRA処 理すると,細胞増殖に関連する遺伝子群の発現が低下し,糖タンパク質や免疫に関する遺伝子群の発現が上昇していた。これは,Ak2ヘテロノックアウトでも同様 であった。ただし,これらの遺伝子群での発現変動のレベルは,Ak2がヘテロノックアウトされている場合,そうでない場合と比べて低かった。この観察結果から,Ak2をヘテロノックアウトした場合にもATRA処理による分化誘導シグナルは入っているが,速やかに応答できない可能性を示唆した。また,細胞を分化誘導した際に核の形態変化から分化程度を確認した際にも,Ak2ヘテロノックアウトは分化しないのではなく,遅くなっていることが確認されたが,遺伝子変動の観察結果に一致した。2 HL-60細胞を分化誘導した際に,発現が低下した遺伝子群と関連の深い因子の探索をしたところ,代謝酵素関連因子が検出された。この因子はAk2ヘテロノックアウトでも検出された。以上の結果については,現在論文作成し、投稿準備中である。
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