研究課題/領域番号 |
19K10091
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
佐藤 啓子 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 助教 (70410579)
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研究分担者 |
佐藤 主税 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 上級主任研究員 (00357146)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Type IX secretion system / PorM |
研究実績の概要 |
代表的な歯周病細菌 Porphyromonas gingivalis の病原タンパク質分泌装置 (Type IX secretion system: T9SS)はバクテロイデスフィラム (Cytophaga-Flavobacterium-Bacteroides グループ)に属する他の歯周病細菌にも保存され、菌種によってはタンパク質分泌だけでなく滑走運動にも関わる装置であることが明らかとなった。T9SSからは数十のタンパク質が分泌されるため、T9SS構成分子欠損株では病原細菌の病原性が著しく低下することが報告されている。分泌装置を構築する個々の因子について構造・機能解析をおこなうとともに、分泌されるタンパク質がどのような共通性を持ち、分泌機構に認識されて内膜・外膜を通過し、複合体を形成し、菌体表層に輸送されるのか、T9SSの全貌を明らかにすることを目的とする。 T9SSコア複合体の構成分子の1つ、PorMについて構造を明らかにした。PorMは、T9SSコア複合体 PorK, PorL, PorM, PorN の4分子の中で最も大きい分子であり、ペリプラズム空間を貫通し、外膜と内膜の分子と結合していると考えられている。P. gingivalis のPorMの分子構造をX線結晶構造解析により解像度3.8で解明した。PorMは、ダイマーを形成し、垂直方向に並んだD1~D4の4つのドメインからできていた。また、滑走細菌のPorMオーソログタンパク質であるGldMと違って、ドメイン1とドメイン2との間に折れ曲がり構造を伴う。この折れ曲がり構造はT9SS タンパク質分泌が十分に行われるためには必要な構造であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
[T9SSコア複合体の構造]T9SSコア複合体を構築する、PorK, PorM, PorN の個々の因子について構造・機能解析をおこなっている。PorMについては、結晶構造解析を行い、その構造を明らかにすることができた。PorMは、ダイマーを形成し、垂直方向に並んだD1~D4の4つのドメインからできており、ドメイン1とドメイン2との間に折れ曲がり構造を伴う。この折れ曲がり構造を安定化させると予想されるアミノ酸を置換したところ、十分なタンパク質輸送が行われなくなったことから、折れ曲り構造はタンパク質分泌に必要な構造であることが示唆された。PorK 、PorN リコンビナントタンパク質を大腸菌に発現したところ、どちらも不溶性であった。PorNについては、巻き戻しができる時があるが、毎回ではなく、安定した条件が得られていない。 [分泌タンパク質の構造]分泌されるタンパク質について、HBP35、RgpBについて解析を行っている。P. gingivalisでは、どちらもオリゴマーを形成している。HBP35については、大腸菌で発現したリコンビナントタンパク質を用いた結晶構造解析から、オリゴマー構造が得られている。一方、RgpBでは、結晶構造解析によるオリゴマー構造が得られていない。
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今後の研究の推進方策 |
[T9SSコア複合体の構造] 引き続き、T9SSコア複合体を構築する、PorK, PorN について構造・機能解析をおこなう。PorK, PorN リコンビナントタンパク質を大腸菌で発現し、結晶化を行う。 [分泌タンパク質の構造] 分泌されるタンパク質 HBP35 において、結晶構造解析から、オリゴマー構造が得られている。このオリゴマー構造を形成するのに必要と思われるアミノ酸を置換する。このアミノ酸置換体 HBP35 を P. gingivalis 内で発現し、オリゴマー形成がどのように変化するのか解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ事情により、遅れが生じた部分があり、そのぶんを次年度に使用することとした。 遺伝学実験に必要な酵素の購入に充てる予定です。
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