研究課題/領域番号 |
19K10095
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研究機関 | 明海大学 |
研究代表者 |
菊池 建太郎 明海大学, 歯学部, 准教授 (30349998)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ヒト唾液腺腫瘍 / Epstein-Barr virus (EBV) / EBER / LMP-1 |
研究実績の概要 |
ヒトを自然宿主とするウイルスや細菌がヒトの発癌に関与するか否かが注目されるようになって久しい。最近われわれは、口腔扁平上皮癌の発症にEpstein-Barr virus (EBV)が関与している可能性を報告した。口腔顎顔面領域の悪性腫瘍としては、口腔扁平上皮癌についで唾液腺腺癌の頻度が高く、また良性の腺腫から腺癌へ悪性転化する症例にもしばしば遭遇する。EBVは唾液中に分泌されることは知られているが、唾液腺腫瘍発症への関与については不明である。そこで、本研究では、ヒト唾液腺腫瘍の発生にEBVが関与するのか否かを明らかにすることを目的とする。現在までに、ヒト唾液腺腫瘍187例(良性125症例、悪性62症例)を用いてEBVの関与について検討をおこなった。はじめに、腫瘍におけるEBV感染の有無についてEBER-ISH法を用いて検討をおこなった。検索した187症例においては、EBERの低発現症例が62.6%、高発現症例が37.4%の結果が示された。つづいて、EBV関連タンパク質であるLMP-1発現について免疫染色法を用いて検討を行った。検索した187症例において、LMP-1の低発現症例が75.4%、高発現症例が24.6%の結果が示された。これらのことから、高発現症例は少ない傾向であるが、ヒト唾液腺腫瘍においてもEBV感染やEBV関連タンパク質の発現がみられることが明らかとなった。さらに、EBERとLMP-1の高発現症例について詳しくみてみると、良性で33.6%と17.6%、悪性で45.2%と38.7%の結果が得られた。このことから、悪性唾液腺腫瘍では、良性唾液腺腫瘍に比較して、EBERとLMP-1の高発現症例が多い傾向にある可能性が考えられた。以上の結果より、ヒト唾液腺腫瘍におけるEBV関与の可能性が示唆され、さらに研究を推し進める必要性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
はじめにPCRによるEBV潜伏感染ゲノムの検出をパラフィン切片から行う予定であったが、サーマルサイクラーの不具合が生じたため、途中から再現性が得られず問題が生じたため実験計画の順番の変更が必要となった。PCR法に先行して、ISH法によるEBER発現と免疫組織化学的染色法によるLMP-1タンパク質発現の検討を行うこととした。特にEBER発現の再現性に関しては同一症例での実験を数回行い再現性をみるために経費も時間も必要以上に要した。
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今後の研究の推進方策 |
サーマルサイクラーの不具合の改善も行われ、他の機種の検討でも対応可能となり問題は解決された。したがって、研究目的を達成するための研究計画・方法に関しては大きな変更点はなく、当初の計画に沿って遂行していく予定である。研究が遅れている部分に関しては、研究に費やす時間(エフォート%)をさらに増やせるように努力・工夫する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予備実験(条件決め)や実験データの再現性をみるのに予想以上に時間を要したこと、およびサーマルサイクラーの不具合などから、当該年度に予定していた実験計画のすべてを遂行することができなかったことが最大の理由である。2020年度の実験計画に関しては、当初の予定に沿って遂行する予定である。2019年度内に遂行できなかった実験内容(次年度使用額)に関しても2020年度の実験計画と同時進行で行う予定である。実験の遂行にあたっては、常に実験時間を作る工夫と効率性を考えて進めていく。
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