研究課題/領域番号 |
19K10100
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
前田 初彦 愛知学院大学, 歯学部, 教授 (30175591)
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研究分担者 |
吉田 和加 愛知学院大学, 歯学部, 講師 (10513210)
杉田 好彦 愛知学院大学, 歯学部, 准教授 (20367618)
久保 勝俊 愛知学院大学, 歯学部, 准教授 (60329604)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 歯原性嚢胞 / 病理診断 / 上皮間葉転換 / 口腔組織発生 / 組織アレイ / サイトケラチン / 免疫染色 |
研究実績の概要 |
歯原性嚢胞は、口腔領域で発生頻度が高い疾患である。嚢胞の病理組織学的所見は類似しており、また、二次的に炎症を伴うことが多く日常の病理診断に苦渋することが多い。これまでに、歯原性嚢胞の病理診断にサイトケラチンの発現を用いた報告があるが、最適な手法は、未だ判明していない。本研究は、発生学的知見と上皮間葉組織病態を応用して、歯原性嚢胞のサイトケラチン発現、上皮間葉転換、上皮増殖因子、結合組織への浸潤、遺伝子変異を相補的に検索して、歯原性嚢胞の簡便で信頼性の高い実践的な免疫染色を用いた病理診断方法を開発することを目指している。この病理診断方法により、歯原性嚢胞の治療に大きく寄与する。 本年度は、前年度に作成した組織アレイ(歯原性嚢胞の歯根嚢胞、含歯性嚢胞、歯原性角化嚢胞および非歯原性嚢胞の鼻口蓋管嚢胞と鑑別診断用の比較対照の鼻歯槽嚢胞、類皮嚢胞、類表皮嚢胞とエナメル上皮腫や扁平上皮癌の各100症例)を用いて、上皮間葉転換(E-cadherin、 N-cadherin、Slug)、上皮増殖因子(Ki-67、EGFR、mTOR、TGF-β)、上皮の角化(Loricrin)、アポトーシス(BCL-2)、浸潤関連(MMP-9)の免疫染色を行った。この結果、歯原性角化嚢胞ではその他の嚢胞と比較して、Ki-67、EGFR、Loricrin等の陽性率が有意に高かった。 この免疫染色の結果は鑑別診断用の比較対照のエナメル上皮腫や扁平上皮癌に比較的類似していた。また、検証としてウェスタンブロッティング、in situハイブリダイゼーションを行った。 以上の結果および前年度の結果より、歯原性角化嚢胞の病理診断においてCK- 13、CK- 17、Ki-67、EGFR、Gli-2、Loricrinの免疫染色を組み合わせて行うことが最適であることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、前年度に作成した組織アレイ(歯原性嚢胞の歯根嚢胞、含歯性嚢胞、歯原性角化嚢胞および非歯原性嚢胞の鼻口蓋管嚢胞と鑑別診断用の比較対照の鼻歯槽嚢胞、類皮嚢胞、類表皮嚢胞とエナメル上皮腫や扁平上皮癌の各100症例)を用いて、上皮間葉転換(E-cadherin、 N-cadherin、Slug)、上皮増殖因子(Ki-67、EGFR、mTOR、TGF-β)、上皮の角化(Loricrin)、アポトーシス(BCL-2)、浸潤関連(MMP-9)の免疫染色を行った。また、検証としてウェスタンブロッティング、in situハイブリダイゼーションを行った。この結果、歯原性角化嚢胞は、その他の嚢胞(歯根嚢胞、含歯性嚢胞、鼻口蓋管嚢胞、類皮嚢胞、類表皮嚢胞)と異なり、上皮増殖因子のKi-67やEGFRおよび上皮の角化を示すLoricrin等の陽性率が有意に高かった。これらの結果と前年度の結果より、歯原性角化嚢胞の病理診断においてCK- 13(陰性)、CK- 17(陽性)、Ki-67(陽性率が高い)、EGFR(陽性)、Gli-2(陽性)、Loricrin(陽性)の免疫染色を組み合わせて行うことが最適であることが判明した。 しかし、新型コロナウイルス感染症拡大により本度発表予定のIAOP(ロンドン、英国)に演題を登録したが、学会自体が2021年に延期となった。この点がおおむね順調とした理由である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、発生学的知見と上皮間葉組織病態を応用して、歯原性嚢胞のサイトケラチン発現、上皮間葉転換、上皮増殖因子、結合組織への浸潤、遺伝子変異を相補的に検索して、歯原性嚢胞の簡便で信頼性の高い実践的な免疫染色を用いた病理診断方法を開発することを目指している。 本年度は、前年度に組織アレイ(歯原性嚢胞の歯根嚢胞、含歯性嚢胞、歯原性角化嚢胞および非歯原性嚢胞の鼻口蓋管嚢胞と鑑別診断用の比較対照の鼻歯槽嚢胞、類皮嚢胞、類表皮嚢胞とエナメル上皮腫や扁平上皮癌の各100症例)を用いて、上皮間葉転換(E-cadherin、 N-cadherin、Slug)、上皮増殖因子(Ki-67、EGFR、mTOR、TGF-β)、上皮の角化(Loricrin)、アポトーシス(BCL-2)、浸潤関連(MMP-9)の免疫染色を行った。また、検証としてウェスタンブロッティング、in situハイブリダイゼーションを行った。 次年度は、より最適な免疫染色を用いた病理診断方法を開発するために、さらに炎症が著しい症例においても病理診断に使用できるのか明らかにする。研究には、2019年度と同様に病理診断により対象疾患と診断され、嚢胞上皮内および嚢胞壁に炎症性細胞浸潤を伴う各20症例の組織アレイを作成する。これまでの結果により選定された免疫染色パネルを用いて作成した炎症の著しい組織アレイに免疫染色および結果のスコアリングを行い、炎症の著しい歯原性嚢胞の病理診断に使用できるのかを検証する。これまでの結果を日本臨床口腔病理学会に学会発表し、Journal of Oral Pathology and Medicineに論文投稿する。
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