研究課題/領域番号 |
19K10101
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研究機関 | 福岡歯科大学 |
研究代表者 |
朔 敬 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 客員教授 (40145264)
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研究分担者 |
北河 憲雄 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 講師 (40628517)
阿部 達也 新潟大学, 医歯学系, 特任助教 (70634856)
吉本 尚平 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 助教 (70780188)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 口腔がん / 扁平上皮癌 / 前癌病変 / 上皮内癌 / 乳頭腫 / 扁平苔癬 / 浸潤 / 細胞競合 |
研究実績の概要 |
口腔扁平上皮癌の浸潤に伴って細胞競合が生じることを想定して、以下の実験を実施してそれぞれの成果が得られた。 (1)細胞競合で生じる細胞死の実態とその分子機序を解析したところ、癌死細胞を癌細胞がRac1依存的に貪食すること、その結果として癌細胞の遊走能が高まることが判明し、同機序が制癌戦略に応用可能性が見出されたとして、同成果を報文として専門誌に投稿した。 (2)細胞競合の生じる癌浸潤界面で高発現することの判明している分子のLAD-1について、細胞骨格アクチンあるいは浸潤時に形成される糸状・葉状仮足形成との関連の上でその機能を解析したところ、LAD-1は遊走先端に生じる仮足に形成されるアクチンアークと同様の分布、すなわちアクチン線維束基部に配置して、仮足形成による細胞運動に関与していることが明らかになった。概要を取りまとめて、論文原稿の作成中である。 (3)口腔扁平上皮癌の側方浸潤界面には癌側に硝子体が形成されることを見いだしたが、これと同様な形態の構造体が口腔扁平苔癬に生じることを見いだした。それはシバット小体と呼ばれてきたもので、ケラチン17陽性を示した。その背景として、同病変では上皮細胞がケラチン17を発現しており、その細胞死過程でシバット小体に濃縮すると解釈し、異角化を通した非アポトーシス細胞死経路の存在を予測した。論文を作成して専門誌に投稿した。 (4)口腔扁平上皮癌ならびに口腔上皮内癌の細胞診基準として先に提唱した五指標方式が高分化型症例のみならず広く口腔癌に応用可能であることを示した。その一部は日本臨床細胞学会で口演発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題を含む研究計画について本学内で倫理審査を受け、許可番号第487号で承認された。共同研究機関での審査申請は本学の承認後に行うとの指導があり、全てが揃うのに時間を要したためにスタートが遅れたが、計画された実験は概ね実施しつつあり、報文の投稿を済ませ、論文原稿の作成を進めると同時に、新たな実験を遂行中である。
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今後の研究の推進方策 |
まず、投稿論文の採否結果を待って、論文修正の指示があれば柔軟に対応する予定である。論文作成中の論文2篇については、これを平成2年度前半期に完成させ、専門誌に投稿する予定である。 進行中の口腔扁平上皮癌細胞の側方浸潤に関しては、ケラチン17からなる細胞骨格線維が浸潤遊走に伴ってどのように配置変化していくかを主眼に解析を進める。とくに、アクチン線維の挙動、糸状・葉状仮足との関連を、LAD-1を始めとする細胞骨格調節因子等の調節機構を明らかにすることを目標として検討し、細胞競合実験の基盤を強固にしたい。 一方、前癌病変としての乳頭腫の成立機序に関しては、三大学の共同研究を推進して症例収集を平成2年度に完了し、形態学的解析を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
千円余の小額残高のため、不要の支出はあえてせずに次年度に合算して有効使用することとした。
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