研究課題/領域番号 |
19K10104
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
鈴木 茂樹 東北大学, 大学病院, 講師 (30549762)
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研究分担者 |
根本 英二 東北大学, 歯学研究科, 准教授 (40292221)
山田 聡 東北大学, 歯学研究科, 教授 (40359849)
土屋 志津 広島大学, 医系科学研究科(歯), 助教 (60610053)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 歯周炎 / バイオインフォマティクス解析 / long non-coding RNA |
研究実績の概要 |
慢性歯周炎発症による歯周組織破壊は微生物因子・環境的因子依存が大きいとされ、発症予測や予後予知性を可能にする一塩基多型などの決定的な遺伝的素因は未だ十分に解明されていない。近年、多くのタンパク質をコードしない RNA (long non-coding RNA: lncRNA) が染色体の各位置から転写され、クロマチンの三次元的構成に寄与し、近傍遺伝子座のみならず異なる染色体上の遺伝子座における mRNA の転写をも制御することが報告されている。しかしながら、歯周組織構成細胞における lncRNA の発現やその歯周炎病態成立への関与についてはほとんど解明されていない。そこで、本研究計画では、歯周組織構成細胞における機能的 lncRNA 群の同定とその作用機序を解明することを目的としている。2020年度は、RNA-seqおよびそのバイオインフォマティクス解析により複数のlncRNAを歯根膜細胞において同定した。さらに、エネルギー代謝経路関連遺伝子座から同定されたlncRNAの機能抑制は、歯根膜細胞の骨芽細胞やセメント芽細胞への分化が著しく抑制されることを見出した。このlncRNAは細胞内の局在解析から、核に豊富に存在することが明らかとなり、miRNA prediction toolによる解析からmiR-371b, miR-373などのmiRNAと高い相補性を持つことが示された。多くのlncRNAは他のmRNAとcompetitive endogenous RNAsとしてグループ化される。competitive endogenous RNAsの発現はlncRNAとmRNAで共有する同一のmiRNAによって制御される。つまりmiRNAがlncRNAに結合することで、miRNAがlncRNA結合により消費され、結果としてmiRNAによる標的mRNAの分解が抑制されるため、lncRNAの発現上昇は同一competitive endogenous RNAsに属するmRNAの発現上昇に至る。現在はこの着目しているlncRNAの歯根膜細胞におけるcompetitive endogenous RNAsとしてのmRNAsと共有miRNAの同定を試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は、候補 lncRNAの選別を行い着目する機能的 lncRNAの同定という主目的を達成でき、今後の研究計画の進展が期待できるため。
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今後の研究の推進方策 |
機能的 lncRNA の標的クロマチン領域(標的遺伝子座)を RIP-seq(RNA 免疫沈降シークエンス)法にて網羅的に解析する。バクテリオファージ PP7の転写因子結合領域とコートタンパク質二量体が特異的に結合することを利用した RNA 標識法を用いる。まず歯周組織構成細胞にコートタンパク質 (PP7) と蛍光タンパク質 (mCherry) の fusion protein を安定発現させた後に、機能的 lncRNA に 24xPP7 (転写因子結合領域を24 回繰り返したステムループ構造)を結合させた RNA を発現させることで、lncRNA を蛍光タンパク質で標識する。その後、蛍光タンパク質に対する抗体を用いた RIP-seq にて、機能的 lncRNA の標的遺伝子座を同定する。さらに、歯周組織構成細胞をLPSおよび TNF-alpha を主とする各種炎症性サイトカインで刺激の条件下で培養した際にも同様の解析を行い、定常状態と比較することで、歯周組織構成細胞の外的要因への反応がエピジェネティクスなパターンとして認識できるか、刺激間で共通のパターンがあるかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
in vitroでの実験計画の一部が2021年度開始予定となり、そのための必要試薬購入費が2021年度での使用となったため。
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