研究課題/領域番号 |
19K10105
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
中村 圭祐 東北大学, 歯学研究科, 准教授 (30431589)
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研究分担者 |
天雲 太一 東北大学, 大学病院, 講師 (80451425)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 第三象牙質 / UVA / 紫外線 / 可視光線 |
研究実績の概要 |
初年度の研究により、波長365 nmの紫外線A波(UVA)をラットの上顎第一大臼歯に照射することで、放射照度に依存した第三象牙質形成が認められることが分かった。そこで2年度目も、初年度に引き続きラットを用いた第三象牙質形成評価試験を行い、温度が及ぼす影響および照射する光の波長がおよぼす影響を調べた。 温度試験では、ラットの上顎の左右第一大臼歯を試験群と対照群に分け、試験群では50℃に温めたジェルにより90秒間温度刺激を与え、対照群は無処理とした。また、波長試験では、試験群では波長365 nmのLEDあるいは波長400 nmのLED(可視光線)を90秒間照射し、対照群ではLED照射を行わなかった。両波長とも放射発散度が2000 mW/cm2のLED装置を用いて照射した。処理の3週後に実験動物をサクリファイスしてマイクロCT分析によって歯髄腔の容積を評価した。その後、脱灰標本を作製し、病理組織学的分析により第三象牙質の形成量を評価した。 温度試験では、50℃の温度刺激では第三象牙質形成が誘導されないことが分かった。サーモグラフィー分析によって、波長365 nmのUVAを90秒間照射することで、40℃程度まで温度が上昇することが示されたが、上記の温度試験の結果より、UVA照射による第三象牙質形成促進は温度刺激によるものではなくUVAによる刺激であることが示唆された。また、波長試験で行ったマイクロCT分析の結果、波長365 nmのUVAで照射した群では対照群に比べて歯冠部の歯髄腔の容積が減少していることが分かった。従って、歯髄腔内で第三象牙質が形成されたことが示唆された。一方、波長400 nmの可視光線照射では歯髄腔の狭窄は認められなかった。また、組織学的分析の結果においても、UVA照射によって第三象牙質が形成されるが、可視光線照射では第三象牙質が形成されないことが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画していた第三象牙質形成のための動物実験は順調に進展している。2年度目の研究により第三象牙質形成は温度刺激によるものではないことが実証され、さらに照射する光の波長に影響を受けることが分かった。しかしながら、2020年度はコロナ禍の影響で予定していた組織標本の免疫染色による分析に遅れが生じている。3年度目には免疫染色による分析に注力して第三象牙質形成のメカニズムを解明する。
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今後の研究の推進方策 |
2年度目の研究により、ラットの第三象牙質形成が照射する光の波長に依存するという非常に興味深い結果が得られた。本知見は光照射による第三象牙質形成のメカニズム解明の端緒となると考えている。UVAと可視光線では光子エネルギーに違いがあり、光子エネルギーの高いUVA照射では歯髄細胞に酸化ストレスを及ぼしていることが考えられる。従って、計画を一部変更して、酸化ストレスの観点から第三象牙質形成のメカニズム解明にアプローチするための免疫染色分析を3年度目に実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、前倒し支払い請求により病理組織標本を作製するための自動包埋装置を購入した。購入前に業者と相談し、装置の使用に際して必要となる試薬(脱水用エタノール、キシレン代替薬品、包埋用パラフィン)を費用に組み込んでいたが、実際に装置を利用したところ、試薬の消費は大きくなく、ランニングコストを抑えることができた。次年度はより頻繁に自動包埋装置を使用する計画であるため、今年度未使用となった研究費を使用して、研究の迅速化に努める。
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