研究実績の概要 |
これまでの研究において、ラットの大臼歯に対して過酸化水素光分解殺菌法を行うと、第三象牙質形成が認められることが分かった。そこで、今年度は、第三象牙質形成促進効果に寄与する因子を同定するために、紫外線A波(UVA)照射(過酸化水素の併用なし)が歯髄および第三象牙質形成に及ぼす影響を調べた。 ラットの上顎左右第一大臼歯を試験群と対照群に分け、試験群ではスポット硬化用LED照射装置(Lx-505, OmniCure)を用いて波長365 nmのUVAを照度2 W/cm2で90秒間照射した。UVA照射中に光エネルギーによる温度上昇を抑える目的で、大臼歯咬合面に水を滴下した。対照群では、UVA照射は実施しなかった。処理の3週後および6週後に実験動物をサクリファイスして上顎第一大臼歯と周辺組織を採取し、マイクロCT分析を行った。歯冠部歯髄腔の体積をマイクロCT分析で評価した結果、試験群では対照群よりも歯髄腔が小さくなっていることが分かった。しかしながら、歯冠部歯髄腔の体積は個体差が大きく、統計学的な有意差は認められなかった。そこで、前年度の研究成果より第三象牙質の形成を誘導しないことが分かっている波長400 nmのLEDを用いて上記と同様の動物実験を行い、波長365 nmの影響と比較した。各個体における試験群の歯髄腔の体積を対照群の値で割って相対値を求めることで、歯髄腔の個体差による影響を可能な限り排除して比較を行った。その結果、365 nm照射では、400 nm照射よりも有意に歯髄腔が小さくなることが分かった。また、3週後と6週後では歯髄腔の相対値に変化は認められなかった。従って、過酸化水素光分解殺菌法における第三象牙質形成誘導効果は、光分解反応に用いるUVAの効果が大きいことが示唆された。また、第三象牙質形成はUVA照射後3週間程度で完了していることが示唆された。
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