本研究では、超高齢社会を迎え深刻な問題となっている根面う蝕の抑制・制御を最終目標とし、そのために必要な根面う蝕の病態を反映した実際のヒト口腔内サンプルを用いた根面う蝕 ex vivo バイオフィルムモデルを構築することを目的とした。ヒト口腔内サンプルより静置系およびフローセル系の2つのバイオフィルムを用いてバイオフィルムを作製したところ、バイオフィルムを形成する細菌数は静置系モデルよりフローセル系モデルの方が速く増殖することが明らかとなった。また、いずれのモデルにおいても経時的に3週間培養することでバイオフィルム中の細菌が最大限増殖することが明らかとなった。 また、上記モデルを用いて形成したバイオフィルムを抑制する新規薬剤として、要時生成型亜塩素酸イオン水溶液(以下MA-T)に着目した。MA-T は、画期的な触媒技術により、通常はほぼ水に近い状態でありながら、反応すべきウイルスや細菌が存在する時だけ姿を変えて攻撃・分解するメカニズムを持ち、高い安全性と強い除菌力を両立させた革新的な除菌剤であり、その成分を含む洗口液やジェルはすでに上梓されている。 先述したモデルを用いて形成したバイオフィルムに対し、MA-Tを作用させたところ、濃度依存性、また作用時間依存性に抗菌効果を発揮することが明らかとなった。 以上の結果より、根面う蝕を引き起こすバイオフィルムをコントロールする新たなアプローチとして、要時生成型亜塩素酸水溶液を用いた方法が有用である可能性が示唆された。
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