研究実績の概要 |
歯周病の疾病概念は、単なる細菌感染から生活習慣病、そして多因子性疾患へと変遷しているが、細菌-宿主間の相互作用に及ぼす環境因子の影響についての検討は不足している。この点に関する知見を得ることを目指して一連の実験を実施した。 あるDNA binding protein がToreponema denticola においてどのような機能を果たしているかについて解明するため,DNA binding proteinの遺伝子欠損株を作出した。野生株と比較し,欠損株はDentilisin活性の有意な低下,酸素曝露下の生菌数の有意な減少を認めた。これらの結果から,DNA binding proteinは,酸素ストレスに対する応答およびDentilisinの発現制御に関わっていることが示唆された。欠損株のDNA マイクロアレイ解析の結果,本菌の表層タンパク質の遺伝子の発現上昇を認めた。qRT-PCR を行い,その遺伝子の有意な発現上昇を確認した。 P. gingivalis Hgp44のアミノ酸配列199-316領域から分割して15個の合成ペプチド(Pep1-15)を作製した。これらを用いてT. denticolaとの付着をELISA にて解析した。また,Pep1-15を用いて,P. gingivalis とT. denticolaとのバイオフィルム形成に与える影響を共焦点レーザー顕微鏡 (CLSM)で観察した。ELISAにおいてPep5, 6, 7,15とT. denticola の付着は,control(合成ペプチド無添加時)に比較して有意に高かった。CLSMの結果,Pep14および15存在下において, P. gingivalis とT. denticola によって形成されるバイオフィルムの厚みがcontrol(合成ペプチド無添加時)と比較して有意に減少した。
|