研究課題/領域番号 |
19K10117
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研究機関 | 東京歯科大学 |
研究代表者 |
木村 麻記 東京歯科大学, 歯学部, 講師 (90582346)
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研究分担者 |
渋川 義幸 東京歯科大学, 歯学部, 教授 (30276969)
東川 明日香 東京歯科大学, 歯学部, 助教 (20822472)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 象牙芽細胞 |
研究実績の概要 |
本研究は象牙芽細胞cAMPシグナルの機械刺激誘発性Ca2+シグナルと石灰化能に対する作用を生物物理・薬理学的に検討することで、細胞内cAMPの象牙質形成に対する作用を明らかにすることを目的としている。2019年度は象牙芽細胞における1)細胞内cAMP増加誘発性Ca2+流入の経路、2)plasma membrane Ca2+-ATPase(PMCA)の詳細な発現と機能について検討を行った。 1)細胞内cAMP増加誘発性Ca2+流入の経路の検討 細胞外Ca2+存在下において象牙芽細胞にアデニル酸シクラーゼ活性化薬であるforskolinを投与すると細胞内cAMPレベルと細胞内遊離Ca2+濃度([Ca2+]i)が増加した。その細胞内cAMPレベル増加、[Ca2+]i増加は、機械感受性チャネルであるTRPV1チャネル、piezoチャネルの阻害薬を投与しても変化しなかった。この結果からforskolin誘発性Ca2+流入はTRPV1チャネル、piezoチャネル以外のイオンチャネルによることが示された。 2)PMCAの詳細な発現と機能の検討 象牙芽細胞にPMCA1-4が発現することを明らかにした。細胞外Ca2+存在下において低浸透圧刺激またはアルカリ刺激を加えると一過性に[Ca2+]iが増加した。その[Ca2+]i増加後の減衰はPMCAの非選択的な抑制薬の投与で有意に減少した。ヒト培養象牙芽細胞をPMCAの非選択的抑制薬を含むまたは含まない石灰化誘導培地中で4週間培養後alizarin染色・von Kossa染色を行うことで石灰化試験を行った。PMCAの非選択的抑制薬投与群では投与しなかった群に比べ、石灰化が抑制された。これらの結果から象牙芽細胞においてPMCA1-4が発現していることが示され、PMCAは生理的な象牙質形成に関与すること、反応象牙質形成に関与することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
最終年度に細胞内のカルシウムイオンを細胞外へ排出するカルシウム排出系であるplazma membrane calcium ATPase (PMCA)に対する細胞内cAMPの作用を検討することになっている。 論文作成の都合上、先に象牙芽細胞におけるPMCAの発現と機能について検討する必要があったためPMCAについての実験を行った。当初初年度に行う研究内容に加え、PMCAについての検討を行ったため、進行状況としてはやや遅れている。実験自体は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度に引き続きアデニル酸シクラーゼ・Gタンパク質共役型受容体活性化による細胞内cAMP誘発性Ca2+シグナルを検討する。加えて、当初予定していた機械感受性チャネルに対する細胞内cAMPによる修飾作用の検討も行う。 1)アデニル酸シクラーゼ・Gタンパク質共役型受容体活性化による細胞内cAMP誘発性Ca2+シグナルの解明 2019年度では細胞内cAMP増加誘発性Ca2+流入の経路が機械感受性チャネルであるTRPV1チャネル、piezoチャネルではないことを明らかにした。今後は他の機械感受性イオンチャネルとcAMP増加で活性化されるcyclic nucleotide-gated(CNG)チャネルに着目し、細胞内cAMPレベルと細胞内Ca2+濃度の同時計測を行い、細胞内cAMP増加誘発性Ca2+流入の経路を明らかにする。 2)機械感受性チャネルに対する細胞内cAMPによる修飾作用 ①cAMPが機械感受性チャネルの機械感受性を増強するか、②様々な強度の機械刺激を行った時の細胞内Ca2+濃度増加と細胞内cAMPレベル変化の刺激強度依存性を検討する。これらから1)機械刺激誘発性細胞内cAMPレベル増加を検討、2)cAMPの機械刺激誘発性Ca2+シグナルに対する増強作用を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文作成の都合上検討項目の変更が生じ、細胞内cAMPレベル測定に用いる高額なcAMPセンサーの購入が減ったため次年度使用額が生じた。また、研究分担者の3月下旬の学会発表旅費として支出予定だったが、学会が誌上発表になったため旅費分が返金となり次年度使用額が生じた。2020年度以降はcAMPセンサー、Ca2+指示薬、アゴニスト、アンタゴニストを多く使用するため、次年度使用額はそれらの試薬代として使用する予定である。
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