研究課題/領域番号 |
19K10120
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研究機関 | 朝日大学 |
研究代表者 |
尾池 和樹 朝日大学, 歯学部, 助教 (10784621)
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研究分担者 |
堀田 正人 朝日大学, その他部局等, 教授 (10157042)
横川 善之 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 教授 (20358310)
川木 晴美 朝日大学, 歯学部, 准教授 (70513670)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 亜鉛置換型ハイドロタルサイト / 層状複水酸化物 / 陰イオン交換 / 硫化物 / 揮発性硫黄化合物 |
研究実績の概要 |
我々はマグネシウムを亜鉛に置換したZn置換型ハイドロタルサイト(Zn置換型HT)を合成し、Zn置換型HTが硫化物吸着能を示すことを以前の研究で明らかにした。本研究では既存の歯科用セメントや樹脂、シリコンなどにZn-HTを混合比を変えて添加した試作材料を作製し、その物性や硫化物吸着能を検討する。 本年度は、Zn置換型HTの合成条件の検討を行い、XRDにて層状化合物であることが確認された試料について、その組成をICPで分析した。対照に試薬Mg-HDT(組成式; Mg6Al2(OH)CO3・4H2O)を用い、Mg-HDTのMg:Alのモル比がおよそ3:1であることを確認した。そして我々の合成したZn置換型HDTのZn:Alのモル比は2:1であった。 このZn置換型HDTをEVA樹脂と混合した材料を開発するため、異なる混合比の材料を試作した。そして、Zn置換型HDTの含有率が20%のシートと、39%のシートを試作した。含有率40%以上ではシートの成型が不良であった。そこで前述の2種のシート中でのZn置換型HDTの分散状態を、SEM-EDXで解析し、ほぼ均一に分散していることを確認した。 次いで、Zn置換型HDT粉末およびZn置換型HDT 含有EVAシートからの蒸留水および細胞培養用培地へのZn, Alの溶解試験を行ったところ、シートからの溶解量は粉末そのものからの溶解量と比べておよそ1/100となるものの少量のZn, Alが溶出することがわかった。さらに、成分が溶出した培地を用い、ヒト歯髄由来幹細胞およびヒト歯肉上皮前駆細胞の応答を評価したところ、粉末を浸漬した培地では細胞増殖が障害されたのに対して、シートから溶出した成分を含む培地では細胞増殖がある濃度では促進され、Zn置換型HDT含有EVAシートを口腔内での使用に関する有用なデータが得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定では本年度に口腔内細菌の動態を検討する予定であったが、実験準備の都合により、来年度に予定していた細胞培養系での評価と入れ替えて行うこととし、培養系での評価で一定の結果が得られ、予定していた研究計画を進めることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の結果をふまえ、Zn置換型HDT粉末およびZn置換型HDT含有EVAシートの硫化物吸着性を評価するため、50ppb-50ppmの濃度の硫化水素水(H2S水)を用いて、H2S量の変化を経時的に測定する。またH2Sのほか、メチルメルカプタンやジメチルサルファイド等の硫黄化合物や他の臭気物質を混合したモデル水を用いての吸着挙動も調べ、選択的吸着性の有無についても検討する。特に、in vitro試験では高濃度硫化物(-1000ppb)の残存濃度を通常歯磨き時間である10分以内に1ppb以下となることを目標として、材料作製条件を絞り込む。また、前年度の培養系評価をさらに進め、Zn置換型HTあるいは酸化亜鉛添加材料を浸漬し、成分が溶出した培地を用いて溶出成分の細胞活性に与える影響を評価する。特に本年度は長期培養を行い、幹細胞等の分化に及ぼす影響についても検討する。さらに、う蝕原因菌や歯周病原因菌による低分子毒素、硫化物吸着評価として ミュータンス菌(Mutans streptococci等)やPorphyromonas gingivalis,Fusobacterium nucleatum等の培養系に、試作材料片を各種の割合で投入し、細菌の増殖や金銀パラジウム合金との共存で黒化現象の低減を測定する。菌数等により抗菌効果を、黒化現象の低減により化合物の硫化物吸着性を評価する。
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