研究課題
GLP-1は食事摂取に応じて小腸L細胞より分泌される.通常GLP-1は分泌後数分で血中のDipeptidyl peptidase-4 (DPP-4)により速やかに分解されるが,現在糖尿病治療薬として使用されているGLP-1受容体作動薬は10数時間から1週間まで様々な作用時間のものが上市されている.GLP-1受容体作動薬は抗肥満作用も期待でき,すでに欧米では肥満症に対し適用されており,メタボリックシンドロームへの治療効果が期待できる.GLP-1受容体は全身に発現していることから,様々な膵外作用が認められている.我々は膵外作用の一つとして抗炎症作用があることをTHP-1細胞を用いて確認した. Lipopolysaccharide刺激で増加したTNF-alphaおよびiNOS遺伝子発現は,GLP-1濃度依存性に抑制された.さらにラットに実験的歯周炎をGLP-1受容体作動薬を継続的に投与したところ,GLP-1受容体作動薬が歯周炎により増加した歯肉の炎症性細胞浸潤および炎症性遺伝子発現を低下させ,歯槽骨吸収が改善された.さらにGLP-1は歯周炎による歯槽骨の破骨細胞誘導を抑制していた. こうした事実より,GLP-1が歯周炎治療に有効であることが明らかとなった.さらにレプチン受容体遺伝子異常(Leprfa/Leprfa)によりインスリン抵抗性および肥満をその表現型とするZucker fatty ラットをメタボリックシンドロームモデルラットとして用い,実験的歯周炎を惹起させ,野生型(+/+)Zucker lean ラットを対照として同様に実験的歯周炎を惹起させ比較することにより,メタボリックシンドロームの歯周炎における影響について検討した.その結果,Zucker fatty ラットではZucker lean ラットに比較し,歯周炎が増悪していることが明らかとなった.
2: おおむね順調に進展している
すでに実験的歯周炎の惹起方法および解析方法は確立していて,Zucker fatty ラットおよびZucker lean ラットに対しても,問題なく実験的歯周炎が惹起できたことを確認した.さらにGLP-1受容体作動薬の持続的投与も問題なく行えている.
メタボリックシンドローム合併歯周炎モデルとしてZucker fatty ラットを用いて,実験的歯周炎を惹起させ,野生型(+/+)Zucker lean ラットを対照として同様に実験的歯周炎を惹起させ比較することにより,メタボリックシンドロームの歯周炎における影響について比較検討する.さらに,そのメカニズムを解明するために,歯肉における遺伝子・蛋白発現解析,マイクロCTを用いた歯槽骨解析,および免疫組織染色による病理組織学的解析を実施する.また,GLP-1受容体作動薬が,メタボリックシンドローム合併歯周炎に有効であることを明らかにする目的で,GLP-1受容体作動薬を持続投与し,メタボリックシンドローム合併歯周炎に対する治療効果を明らかにするとともに,その作用機序を解明する.
予定していた動物実験が遅れたため,および新型コロナ感染症により学会が延期となったため次年度使用額が発生.動物実験については,すでに問題なく進行中である.
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件)
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