研究課題/領域番号 |
19K10136
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研究機関 | 朝日大学 |
研究代表者 |
奥山 克史 朝日大学, 歯学部, 准教授 (00322818)
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研究分担者 |
松田 康裕 北海道医療大学, 歯学部, 講師 (50431317)
玉置 幸道 朝日大学, 歯学部, 教授 (80197566)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | フッ化チタン / う蝕抑制 / PIXE/PIGE法 / フッ化物局所応用 |
研究実績の概要 |
フッ化物によるう蝕抑制法としてフッ化チタンの応用も考えられ、フッ化ナトリウムより優れた抗う蝕作用を示すことが報告されている。しかしフッ化チタンは酸性度が強く、安全な使用のための適切な酸性度や濃度が不明である。また、フッ化チタンによるう蝕やチタンへの影響が明確でないという問題もある。そこで本研究では1)局所的フッ化物応用に適正な酸性度、および濃度を確定させる。2)歯科材料へ混合させることによる、う蝕への影響の評価。3)チタン合金への影響。を評価検討し、チタンのさらなる歯科応用への基礎的知見を得ることを目的とした。 2019年度は、1)【至適酸性度および濃度の確定】として、0.1, 1, 2%フッ化チタン溶液および1%溶液(pH1程度)をpH4, 5, 6に調製した溶液を作製し、象牙質を露出させた薄切試料にフッ化チタン溶液にて処理後、う蝕発生環境である自動pHサイクル装置に試料を供した。8週後偏光顕微鏡にて脱灰程度を、PIXE/PIGE装置(量研機構高崎量子応用研究所所有)にてフッ素およびチタンの歯質内への元素分布(浸透)を評価した。その結果、溶液濃度が高いほど、同じ濃度ではpH1が4~6よりも少ない脱灰深さと多いフッ素、チタン取り込み量を認めた。また、フッ素歯質内部まで浸透しているのに対し、チタンは歯質表層にのみ沈着していることも認めた。さらに、同じ濃度のフッ化ナトリウム溶液処理と比較すると、脱灰深さでチタン溶液が小さい値を認めたことから、フッ化チタン溶液の使用が脱灰抑制に有意であることが示唆された。 2)【フッ化チタンによるエナメル質構造への影響の検討】ということで、エナメル質の主成分であるハイドロキシアパタイト粉末にフッ化チタン溶液を作用させ、アパタイトに取り込まれたフッ素量の測定したところ、同じフッ素濃度でもチタン溶液処理の方が高いフッ素取り込みを認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度は計画1)については概ね実施しており知見も得られている。しかし、TMRによる脱灰量の評価が行えなかったため、フッ化チタンによる脱灰へのより詳細な影響が把握できなかった。また、PIXE/PIGE測定において、予定してあった若狭湾エネルギー研究センターでの実験が先方の装置の不具合により中止となってしまい、計画通りの測定が行えなかった。 計画2)についてフッ素量の測定は行えたが、XRD等での解析まで行うことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度に引き続き、フッ化チタンの濃度やpHによるう蝕抑制への影響を検討するが、TMRによる脱灰量の検討が難しいため、マイクロCT(朝日大学所有)を用いて評価することに変更し、実施する。また、将来的に口腔内で使用することを想定していることから、フッ化チタン溶液の細胞毒性について検討が必要となり、川木晴美氏(朝日大学)と共同で行うこととした。フッ化チタンのアパタイトへの影響の検討として、XRDやXPS、EDXによる評価を行うが、XRDについては状況により他研究機関へ測定を依頼することも検討している。 フッ化チタン溶液のチタンへの影響の検討は、チタン板へ溶液を作用させ、表面の観察から行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた若狭湾エネルギー研究センターでのPIXE/PIGE測定が、先方の装置の不具合により9月以降中止となってしまい、施設利用料と旅費が計画より少なくなってしまった。そのため研究費に変更が生じた。 次年度(2020年度)は細胞毒性試験を行うため、変更が生じた分を細胞の購入に充てる予定である。
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