研究課題/領域番号 |
19K10140
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
林 潤一郎 愛知学院大学, 歯学部, 准教授 (30350937)
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研究分担者 |
福田 光男 愛知学院大学, 歯学部, 教授 (40156790)
長谷川 義明 愛知学院大学, 歯学部, 教授 (70460524)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 抗菌光線力学療法 / バイオフィルム / インドシアニングリーン / 歯周病原細菌 |
研究実績の概要 |
研究代表者らの研究室では、これまでインドシアニングリーンと半導体レーザーを用いた、歯周病治療における抗菌光線力学療法(aPDT)の開発を続けてきた。インドシアニングリーンをキトサンでコーティングしたPLGAナノ粒子に封入した新規の光感受性物質の光感受性物質としての評価と、従来のレーザー照射法とは異なり、歯周ポケットの外部から光を当てる外部照射法の開発を行っている。本課題は、その一環として口腔細菌のバイオフィルムに対して、新規のaPDTの殺菌効果等を調べる研究を行っている。 本年度は、昨年度に引き続き、P.ginigvalisのバイオフィルムに対する評価を行った。P.ginigvalisのバイオフィルムについて、2種類のモデルを作成した。一つは、血液寒天培地上にバイオフィルムに培養したもの、一つは、ポリスチレンの培養ウェル状に培養したものである。血液寒天培地上のバイオフォルムは硬く、コロニーのような粘調度を示した一方、培養ウェル上のものは、薄く剥がれやすい傾向があった。バイオフィルムの観察は、培養ウェル上のものの方が適しているため、同方法を採用して、実験を継続することとした。S.gordoniiについても同様の方法で培養をおこない、安定してバイオフィルムを作成することができた。近く、殺菌効果の確認を行う予定である。 また、同aPDT法の臨床応用を目指し、臨床研究を開始した。40名の患者を対象に、殺菌効果の確認を行った。さらに、関連した実験として、難治性根尖性歯周炎に関連すると言われているE.faecalisのバイオフィルムと感染根管モデルを作成して、殺菌効果を調べた。この研究については、本科学研究費に関連して論文にまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウィルス感染症の流行が継続しており、その感染拡大防止対策への対応が求められた。そのため、研究業務に従事する時間が減り、実験が滞った。 加えて、バイオフィルムの作成を安定的に行うことができず、実験の度に結果にばらつきが生じ、結果の再現性がとれない時期がつづいた。 本研究で基礎的なデータを収集するとともに、臨床研究も並行して進めており、その遂行に研究チームのエフォートが分散した。また、本研究とリンクして行ったE.faecalisバイオフィルムに対するaPDTの基礎実験がまとまりつつあったため、その仕上げにもエフォートを割いた。これらの理由から、本研究の進捗がふるわず、遅れる結果となった。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画は現時点で変更はない。研究チームに大学院生が加わり、研究を進めやすくなったため、これまでの目標で研究を進めていく。 まず、バイオフイルムの性状分析を行う。走査型電子顕微鏡での表面性状の形態確認、生菌 /死菌比率の測定、共焦点型レーザー蛍光顕微鏡による厚み計測 などの性状分をおこなう。 これまでの浮遊細菌の実験でS.gordoniiはP.gingivalisよりもaPDTに対して抵抗を示すことがわかったているため、P.gingivalis、S.gordoniiともに、それぞれ単独のバイオフィルムで、aPDTによる殺菌能をしらべ、浮遊細菌の場合との違いをみる。その後、混合培養バイオフィルムを用いて、ぞれぞれの菌に対するaPDTの影響を観察する。また、直接照射だけでなく、歯肉モデルを介在させての外部照射でのaPDTの殺菌効果を確認する。 次に、バイオフィルム関連遺伝子発現に対するaPDTの影響を確認する。gtfB (EPSの不溶性グルカン産生に関連)、luxS (細胞間情報伝達に関連)gloEL、dnaK(ストレス応答タンパク)などの発現状態を調べる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進捗の遅れもあって、物品費の使用が予定より少なかった。また、学会発表や研究関連の出張もなかったため、旅費の使用もなかっ た。次年度について、細菌培養関連消耗品で20万円、レーザー関連消耗品で10万円、顕微鏡関連20万円、遺伝子発現解析関連消耗品で40万円、その他消耗品で10万円、旅費で20万円、論文出版にかかる経費で30万円で150万円の支出を予定している。備品の購入予定はない。
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