研究課題
慢性歯周炎における歯周組織破壊は、歯周病原細菌により誘導される慢性炎症によりもたらされるため、慢性炎症反応の機序解明は歯周病における歯周組織破壊を阻止する上で重要である。本研究は、歯周病原細菌の感染に際して好中球が放出する好中球細胞外 トラップ(neutrophil extracellular traps; NETs)およびNETsによる炎症応答の解明を目的とする。慢性歯周炎の歯周組織には好中球の他にマスト細胞が集積する。昨年度の研究実績から、歯周病原細菌Fusobacterium nucleatum感染によりマスト細胞はmast cell extracellular traps (MCETs)を放出することが示された。F. nucleatum感染によりマスト細胞から放出されたMCETs に発現する分子群についてサイトカインアレイ法で解析した結果、MCETsは炎症の惹起を担うマクロ ファージ遊走阻止因子(macrophage migration inhibitory factor, MIF)を発現していた。今年度は、MCETsにおけるMIF誘導メカニズムについて解析を行い、F. nucleatumによるMCETs放出には同菌の細胞内侵入が必要であることが示された。また、F. nucleatumの細胞壁成分リポ多糖(LPS)がMIFを誘導することが明らかとなった。F. nucleatum LPSによりマスト細胞のMCETs放出を誘導する受容体について検討した結果、LPSによるcaspase-4/5活性化がMIFを誘導することが明らかとなった。さらに、MCETsはマクロファージからIL-1beta, IL-6およびIL-8産生を誘導し、同作用はMCETsに発現するMIFにより担われ、MAPキナーゼERKならびにJNK阻害剤により抑制された。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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