研究課題/領域番号 |
19K10145
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
原田 浩之 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (40343149)
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研究分担者 |
青木 章 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (30302889)
淺原 弘嗣 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (70294460)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 歯周病 / 歯根膜 / mohawk homeobox |
研究実績の概要 |
歯周病とは、歯周組織に発症し、歯周組織を破壊する疾患の総称である。通常、臨床において多く遭遇する疾患としては歯肉炎、歯周炎がある。どちらも歯頸部に付着する細菌性プラークにより引き起こされる慢性炎症であるが、歯肉に限局し、付着の喪失や歯槽骨吸収を伴わない歯肉炎に対し、歯周炎は歯肉、セメント質、歯根膜、歯槽骨まで炎症が波及し歯根膜のバリアが破壊され、歯槽骨の吸収や歯牙の動揺が起こってしまう。 歯周炎と全身疾患とは密接な関連があり、全身疾患が歯周炎を進行させることが明らかになっているが、近年では歯周炎が全身疾患の進行を促進することも多く報告されている。心筋梗塞などの心血管系疾患、誤嚥性肺炎、低体重児出産・早産、糖尿病などが挙げられており、歯周炎は,口腔領域ばかりでなく全身をも脅かす可能性が指摘されている。 そこで、歯根膜に多く存在し、その恒常性維持に寄与していることが明らかとなっているMkxは歯周病の病態進行において制御的機能をもつと予想される。本研究ではMkxをノックアウトさせることによって、歯周病の進行機序、野生型との比較における差異を調べると同時に、Mkxがノックアウトしていない野生型では歯周病を誘発した際にMkx発現量の変化を解析することにした。歯周病予防においてのMkxの機能を明らかにすることが今後の歯周病の予防および治療に変革をもたらすと考えられる。 また近年注目されているシングルセルRNAシークエンスでは一細胞レベルで遺伝子発現を分析する手法であり、歯根膜細胞の多様性や遺伝子発現の分析方法そして導入することも検討している
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度ではノックアウトラットおよび歯周病モデルの作製を確立し、段階的にその解析を開始し、現在ではCTの撮影方法および切片の作製を開始している。また、前述のように、シングルセルRNAシークエンスを用いることも解析方法の一つとしているので、歯根膜細胞の単離においての条件検討を実施している 概ね計画どおりではあるが、新型コロナウィルスの影響で現在は動物の管理のみで解析などは一時停滞している状況である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は引き続き歯周病モデルの作製を継続し、解析およびシングルセルRNAシークエンスの条件検討が随時可能な環境を維持する。 具体的にはCT及び切片標本を作製して、骨、歯根膜の変化および炎症性細胞の浸潤、コラーゲン線維、破骨細胞などの形態を評価するとともに、ラット抜去歯からqPCR解析するによってMkx発現量、コラーゲン細胞、破骨細胞、骨細胞など関連細胞の遺伝子発現や炎症性サイトカインの分泌について分析する予定である。これらの方法を用いて炎症下でMkxがどのように歯根膜内で作用するか、Mkxの欠如した個体では炎症がどのように進行機序を辿るのかを解析する予定である。シングルセルRNAシークエンスでは抜去歯からの細胞単離に成功したのち、野生型とMkxノックアウトラットの歯根膜細胞の遺伝子発現パターンを分析し、Mkxの具体的な機能や作用機序を明らかにするとともに歯周病や歯周組織の恒常性に関与する他の遺伝子とのネットワークおよびその特定も視野に入れている。 ただし歯周病モデルおよびその比較対象である野生型では週齢が16週程度と成年を過ぎるため、骨密度などの関係上抜歯することは困難であると予想されるため、歯周病モデルではない若齢のラットを使うこともシングルセルRNAシークエンスでは考慮している。
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次年度使用額が生じた理由 |
切片の作製は開始しているが、まだ多くなく、その物品費の使用が少なくなっている。本年度は海外出張に行っておらず、これに関しては早期に結果をだして、発表する予定である。
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