研究課題/領域番号 |
19K10146
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
吉羽 永子 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (10323974)
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研究分担者 |
吉羽 邦彦 新潟大学, 医歯学系, 教授 (30220718)
大倉 直人 新潟大学, 医歯学総合病院, 助教 (00547573)
枝並 直樹 新潟大学, 医歯学系, 助教 (80804567)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | マクロファージ / ラミニンアイソフォーム / インテグリン / ヒト歯髄 / リンパ管 |
研究実績の概要 |
免疫機能の中心的役割を担っているマクロファージは、M1型と称される炎症を促進するものと、M2型という炎症を抑制し組織の修復に働くタイプのものに大別できる。本研究では、ヒト歯髄組織におけるマクロファージの特にM2型の動態について解析し、新たな治療法への展開を目指している。 昨年度までの研究により、CD163をマーカーとするM2型マクロファーは常に神経線維保護機能を有するシュワン細胞と共在していることが明らかとなった。マクロファージは何らかの基質に接着して存在する。そこでシュワン細胞のラミニンに着目した。基底膜の構成成分であるラミニンは、α鎖(1-5)/β鎖(1-3)/γ鎖(1-3)の組み合わせにより現在19種類以上のアイソフォームが報告され、組織特異的に分布する。その受容体であるインテグリンはα鎖(3,6,7)/β鎖(1,4)をもち,各ラミニンタイプへの結合特異性は異なる。これらがマクロファージの表現型に関与するのではないかと考え、先ずはヒト歯髄組織におけるラミニンアイソフォームについて解析した。その結果、α1鎖は発現しておらず、α2鎖はシュワン細胞のみで発現され、一般に皮膚などのラミニンタイプとされるα3鎖は歯髄ではリンパ管において発現されることが明らかとなった。α4鎖は一部の血管において認められ、α5鎖は全ての血管が発現していた。シュワン細胞のラミニンアイソフォームはα2β1γ1(211)であることから、in vitroにおいて検証したところ、ラミニン211は他のアイソフォームよりも優位にマクロファジをCD163の陽性に分化させること、これにはラミニン関連インテグリンの親和性が関与していることが示唆された。これまでMφの分極化は微小環境によるサイトカインによると考えられてきたが、本研究により細胞外基質であるラミニンがMφの表現型に影響を与えることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究から、細胞外基質であるラミニンアイソフォームはMφの表現型に影響を与えることを見出した。現在、その誘導機構についてデータを蓄積中であり、興味ある知見が得られていることから、進歩状況は良好であると考えている。 また、その研究過程において、ヒト歯髄のリンパ管はラミニン332で検出できることも見出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、in vitroでの機能解析を進める。さらに、ヒト歯髄においてはリンパ管の存在自体がいまだに論争の的であることから、ラミニン332をマーカーに、ヒト歯髄リンパ管内皮細胞の解析を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今後さらなる解析が必要のため、実験に使用する試薬等の購入が必要である。
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