研究実績の概要 |
歯科治療において歯を削る歯科ドリル音は不快感や恐怖心を与えるものであり、その対策は患者が快適に治療を受けるための重要な課題である。本研究においては、歯科騒音対策として、流体音響工学(流体力学と音響工学の融合)という新たな分野を組み込み、数値流体音響シミュレーションによる発音現象をとらえようとしたものである。 初年度において、スーパーコンピュータを用いた計算を進めるための前準備として、既成の歯科ドリルのCADデータを基に、インペラ(回転領域)とボリュート(静止領域)の計算格子(メッシュ)の作成を進めた。令和2年度においては、既存の歯科ドリル音に対する主観的心理評価と音響物理量との関係について明らかとして、得られた成果を論文発表した。また、1分間に40,000回という非常に高速に回転する歯科ドリルにおいて、16万回の回転数での空力騒音のシミュレーションをスーパーコンピューターによる計算を行った。さらにシミュレーション結果の精度を検証するために、歯科診療室において実際に16万回で歯科ドリルを操作したときの測定して得た音響データと比較した。令和3年度においては、診療室における歯科ドリル音対策を検討するうえで、コロナ感染症により音環境の変化の現状を把握する必要性を認めたことから、診療室でのコロナ感染症対策に伴う騒音レベル変化を計測し、さらにスタッフへの心理的影響についての調査報告を行った。令和4年度においては高速回転に対応できるスーパーコンピューター富岳を用いた計測を行うことができた。
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