研究課題/領域番号 |
19K10150
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
堀 綾花 岡山大学, 歯学部, 客員研究員 (80828715)
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研究分担者 |
高柴 正悟 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (50226768)
久保田 聡 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (90221936)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 歯肉 / 線維化 / CCN2 / CCN3 / フッ素イオン |
研究実績の概要 |
本研究の目的は抗う蝕作用を持つフッ素イオンが歯周組織の線維化を抑制するかを検証することである。昨年度はまず予備的にマウス線維芽細胞株NIH-3T3を用いた検討を行ったところ、フッ化ナトリウム(NaF)が予想に反して線維化分子cellular communication network factor (CCN)2の遺伝子発現を誘導し、抗線維化分子CCN3の発現には有意な影響を及ぼさないことが明らかになった。しかしそれと同時に、驚いたことにNaFはTGF-betaによる線維化誘導によって発現が上昇したⅠ型コラーゲン遺伝子については、仮説通りにNaFによって抑制することが明らかになった。こうしてNaFの抗線維化作用が立証されたので、本年度は次のステップに進んだ。すなわちヒト正常歯肉から得た線維芽細胞に、SV40 large T antigenとhuman papilloma virus 16 E6/E7遺伝子を導入することにより不死化を試み、これを用いてNaFの抗線維化作用、ならびにCCN2の発現誘導作用の再検討を行なった。Large T抗原とE6/E7遺伝子を導入したヒト歯肉線維芽細胞に対してTGF-betaで線維化を誘導しNaFを作用させたところ、NIH-3T3による予備実験同様、I型コラーゲン遺伝子発現が用量依存的に抑制され、CCN2遺伝子発現は逆に誘導された。そしてCCN3遺伝子に対する影響はやはり明瞭ではなく、線維化形質マーカーとされるalpha-smooth muscle actin (alpha-SMA)の発現にもNaFは有意な影響を与えなかった。以上の結果より、NaFのヒト歯肉線維化を抑制する機能はin vitroで確認されたと同時に、その作用機構がCCN2やalpha-SMAを介さない未知なメカニズムによることも確実になった。この解明は今後の新たな課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に引き続き、本研究は当初の仮説の核心となる部分を実証しつつ、予備実験を完了したあとヒト由来不死化細胞を使ったNaFの効果の検証をほぼ終えている。これは計画通りの進捗状況であるため上記評価となった。
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今後の研究の推進方策 |
研究は順調な進展を見せているため、来年度も当初の研究計画に沿って実施する。ただし不死化細胞の性状解析の解析には十分でない点があり、これにも平行して取り組む必要がある。現在研究計画通り、基礎研究の最終段階である動物モデルを用いた実験に進むにあたり、実施体制の確認を行なっている。この実験には新たな大学院生等の協力が必要となるかも知れない。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の拡大により旅費の支出が一切なかったことに加え、大学での研究活動制限により消耗品などの支出が減少したため。本年度は研究加速とWebを通じた成果発信のために次年度使用額を活用する。
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