研究課題/領域番号 |
19K10154
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
鵜飼 孝 長崎大学, 病院(歯学系), 教授 (20295091)
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研究分担者 |
吉村 篤利 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 教授 (70253680)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 破骨細胞 / 破骨細胞前駆細胞 / 頭蓋骨 / HMGB1 |
研究実績の概要 |
咬合性外傷による骨吸収のメカニズムは未だ十分に解明できていない。これが明らかになれば効果的な治療法の確立につながると考えられる。本研究の目的は外傷性咬合による骨吸収への静止期破骨細胞前駆細胞や RANKL 刺激を受けた破骨細胞前駆細胞から破骨細胞への分化に対する High Mobility Group Box 1(HMGB1)の影響を検討することであった。 そこでまずマウス臼歯咬合面にワイヤーを装着して歯に外傷力を付与した5日後の分岐部の骨吸収状態を確認した。摘出した組織は病理組織標本を作製して、ヘマトキシリンエオジン染色ならびに酒石酸耐性酸ホスファターゼ染色を行い、組織の破壊状態ならびに破骨細胞の出現状況を確認し、これまでの報告のように骨破壊を引き起こせることが確認できた。 しかし歯肉への lipopolysaccharide(LPS) の影響が根分岐部に及ぶことを確認するために、臼歯頬側歯肉に LPS を7回、10回と頻回注入をしたが安定して十分に根分岐部歯周組織に炎症を惹起することができなかった。頭蓋骨の縫合部分にも破骨細胞が出現しており、静止期破骨細胞前駆細胞が存在していると考えられる。そこで、一部予定を変更して外傷性咬合時ではないが、マウス頭蓋での RANKL 刺激を受けた破骨細胞前駆細胞から破骨細胞への分化に対するHMGB1の影響を検討することとした。 現在、マウス頭蓋にLPSを注入した際の、経時的(1,3,5,7,10日後)な破骨細胞の出現状態が確認できている。今後まず、頭蓋骨の炎症性骨吸収に対する効果的な抗RANKL抗体投与スケジュールを検討し、その後、抗RANKL抗体投与の有無の違いがHMGB1注入による破骨細胞形成にどのように影響を及ぼすのかを検討していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予定通りLPS注入により根分岐部に炎症を惹起することができなかったため、炎症惹起部位を変更して RANKL 刺激を受けた破骨細胞前駆細胞から破骨細胞への分化に対するHMGB1の影響の検討を進めている。頭蓋へのLPS注入による骨破壊を病理組織学的に経時的に検討した結果、1回のLPS注入により7日後までの炎症の拡大と破骨細胞の増加ならびに10日後の炎症と破骨細胞数の減少が確認できている。 現在、2年目の大学院生を指導しながら一緒に研究を行っている。新型コロナウイルス感染の影響もあり、密にならないよう配慮しながらの研究が必要で、十分な時間を確保できない中での研究ではあるが、研究のモデルを一部修正しながらも着実に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
現在、LPS注入によるマウス頭蓋組織への炎症の惹起と骨吸収の誘発ができている。今後早急にLPS注入による頭蓋骨吸収を効果的に抑制できる腹腔への抗RANKL抗体投与スケジュールを確立する予定である。 その後、上記スケジュールによる抗RANKL抗体投与の有無の違いが、頭蓋へのHMGB1単独あるいはLPSとの同時注入による破骨細胞形成にどのように影響を及ぼすのかを病理組織学的に検討していく。これにより、RANKL 刺激を受けた破骨細胞前駆細胞から破骨細胞への分化に対するHMGB1の影響を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度、実験の一部計画変更に伴い、追加のモデル作成を行った。そのため、予定していた免疫染色などを行えておらず次年度使用額が生じた。今後、追加の実験に数種類の免疫染色を行う予定としており、そのための抗体や染色試薬などの購入に使用する予定である。
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