研究実績の概要 |
現在のコンポジットレジン修復では、覆髄剤は歯質や充填材料との接着性が得られないことから、辺縁漏洩のリスクを回避するために適用されない。本研究では、MTAの主成分であるポルトランドセメントにレジンを添加した、象牙質接着性および石灰化促進作用を有する新規接着性覆髄剤(以下、PT-resin)を含む、市販されている覆髄剤セラカルLC(BISCO Dental Products, USA)およびダイカル(Dentsply Sirona, USA)がヒト歯髄由来細胞DPCs(Dental Pulp Cells, AD010-F-RA, DV Biologics, USA)に対する影響について検討を行うことを目的とした。本研究の条件では、セラカルLC群では、PT-resin群と同様に24時間後では細胞数に有意な変化はみられなかったが、48時間後には細胞数の減少を認め、72時間後も細胞の増殖は認めなかった。一方ダイカル群では、24時間後の時点でPT-resin群・セラカルLC群より細胞数は減少し、その後も増加は認めなかった。培養72時間の時点ではコントロール群が最も細胞数が多く、次いでPT-resin群が多く、セラカルLC・ダイカルでは細胞数は有意に少なかった。このことは、pHの変化のほかに、覆髄剤から溶出されるイオンやモノマー成分などの別の要因がDPCsの生存に影響していると考えられる。今後、培地中のpH変化や材料の量や浸漬期間などの異なる条件でのpHの変化、カルシウム以外の徐放されるイオン・成分などについて検討を行うとともに、生体での歯髄組織への影響についても検討する必要がある。
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