現在、直接覆髄法や部分断髄法の施術時には、露髄部および歯髄創面表層を2から10%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液等を用いて洗浄を行う(ケミカルサージェリー)が、次亜塩素酸ナトリウム溶液の持つ強アルカリ性のため歯髄表層に壊死層が形成され、本研究の最終目標である生物学的現象を模倣した象牙質-歯髄複合体再生誘導の達成は困難である。また、壊死層の出現は封鎖性の低下を招き、再感染の恐れを招く。これらの懸念を解消するため、前年度に引き続き次亜塩素酸ナトリウム水溶液に変わる歯髄組織に為害性の少ない洗浄法の検討を行った。 1)プラス帯電性オゾンナノバブル水およびナノバブルオゾン水の洗浄効果 前年度にプラス帯電性オゾンナノバブル水の歯内治療における洗浄液としての有用性につき検討したが、本年度は条件を変えて確認した結果、1分間の作用で、Enterococcus faecalisによるバイオフィルムへの殺菌効果が次亜塩素酸ナトリウム溶液やグルコン酸クロルヘキシジン溶液と同等の殺菌効果を有することを確認した。さらに、これとは別にオゾン水であるナノバブルオゾン水についても検討を行い、次亜塩素酸ナトリウム溶液およびグルコン酸クロルヘキシジン溶液と同等か、それ以上の殺菌効果を持つことが確認された。 2)インドシアニングリーン封入ナノ粒子と半導体レーザーを用いた抗菌光線力学療法の洗浄効果 上記1)と並行して、インドシアニングリーン封入ナノ粒子を作成し、半導体レーザーにより励起することで殺菌効果を発揮させる抗菌光線力学療法の効果についても検討を行い、この方法でEnterococcus faecalisのみならずCandida albicansへの殺菌効果も有することが確認された。 以上の研究成果により、新規象牙質-歯髄複合体再生療法の手技・手法開発に有用な知見を得ることができた。
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