研究課題/領域番号 |
19K10157
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
加藤 幸紀 北海道医療大学, 歯学部, 講師 (50281283)
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研究分担者 |
長澤 敏行 北海道医療大学, 歯学部, 教授 (90262203)
植原 治 北海道医療大学, 歯学部, 助教 (00709248)
古市 保志 北海道医療大学, 歯学部, 教授 (80305143)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | メタゲノム解析 / 消化管細菌叢 / 妊婦 / 新生児 / 歯周病治療 |
研究実績の概要 |
口腔内の常在細菌叢が腸内細菌叢に及ぼす影響に注目が集まっている。歯周炎に罹患した妊婦では早産・低体重児出産のリスクが高まることが知られている。母親の健康な口腔細菌叢の維持が新生児の健康に果たす影響が大きいことは、医科歯科に限らず健康増進のための方策としての波及効果が高い。新生児は出産時に母親からあるいは周囲の者や環境を介して細菌と接触し、腸内細菌叢が形成される。ビフィズス菌は出産後早期に新生児腸管内で増殖し、感染防御や粘膜免疫系の発達に影響する。しかしビフィズス菌をはじめ新生児に定着する細菌叢の由来については明らかにはなっていない。 本研究では、メタゲノム解析・リアルタイムPCR法といったマイクロバイオーム解析を応用して、母親の口腔環境整備が子の成長発育、免疫能の獲得、および消化管細菌叢形成に果たす役割について明らかにすることを目的としている。 2020年度において、切迫早産妊婦被験者数は30名となり、うち出産に至ったのは25名である。現在、健常妊婦30名との比較解析を実施中である。出産状況においては、切迫早産妊婦は帝王切開での出産が多く、このため新生児は健常妊婦に比べ、低体重児出産が有意に多い状況であった。唾液中の女性ホルモン量を測定したところ、切迫早産妊婦ではプロゲステロン量が健常妊婦よりも低い傾向にあることが示された。歯周組織状況については、切迫早産妊婦では健常妊婦に比べ、有意に歯肉炎症状況が強く、プロービング深さは深いことが示された。さらに、被験者数がほぼそろい、2021年度には口腔・膣・腸管細菌叢のマイクロバイオーム解析を実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
鹿児島市立病院にて切迫早産妊婦を被験者として収集しているが、新型コロナウィルス感染症流行に伴う被験者収集の遅れをとり戻し、目標被験者数は達成目前となっている。このため、2020年度に解析を開始する予定であったメタゲノム解析を2021年度に持ち越したため、やや進行に遅れがみられる。 妊婦の口腔内状況の比較解析に加え、これまで収集したサンプルについては、ホルモン量測定、細菌DNA抽出、メタゲノム解析、およびリアルタイムPCR法を実施して、統計解析を進行している。
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今後の研究の推進方策 |
1.目標被験者数に達した時点で、マイクロバイオーム解析を開始し、統計学的解析の最終段階に入る。 2.これまで収集したサンプルについては、生化学的・細菌学的解析を継続して実施する。 3.健常および切迫妊婦臨床所見、生化学的解析、微生物学的解析をもとに、母親の口腔環境整備が子の成長発育、免疫能の獲得、および消化管細菌叢形成に果たす役割について明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
被験者数が達したのは2020年度末であったため、マイクロバイオーム解析は2021年度に持ち越された。このため2020年度に計上していた解析費用は、2021年度に繰り越しとなった。
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