研究課題
口腔内の常在細菌叢が腸内細菌叢に及ぼす影響に注目が集まっている。歯周炎に罹患した妊婦では早産・低体重児出産のリスクが高まることが知られている。母親の健康な口腔細菌叢の維持が新生児の健康に果たす影響が大きいことは、医科歯科に限らず健康増進のための方策としての波及効果が高い。新生児は出産時に母親からあるいは周囲の者や環境を介して細菌と接触し、腸内細菌叢が形成される。ビフィズス菌は出産後早期に新生児腸管内で増殖し、感染防御や粘膜免疫系の発達に影響する。しかしビフィズス菌をはじめ新生児に定着する細菌叢の由来については明らかにはなっていない。本研究では母親の口腔環境整備が子の成長発育、免疫能の獲得、および消化管細菌叢形成に果たす役割について明らかにすることを目的とした。全身疾患のない正常分娩が予想される健常妊婦30名と、産科医から切迫早産と診断された妊婦30名を被験者とした。安静時唾液の採取と、各種粘膜組織(頬粘膜、膣粘膜、腸管粘膜)をスワブ法で採取し、各検体から細菌DNAを抽出し、メタゲノム解析を実施した。また唾液中のエストロゲン・プロゲステロン量をEIA法で定量した。この結果、歯肉炎が重度であると、子の在胎週数が短くなり、低体重児となる可能性があることが示された。また、切迫早産の要因の一つとしてプロゲステロン量の低下が考えられ、さらにはプロゲステロン量は歯肉の炎症状況に関連する可能性が示された。メタゲノム解析により、健常妊婦と切迫早産妊婦では口腔細菌叢構成が異なることが示された。これらの結果から、妊婦のプロゲステロン量低下は早産・低体重児出産に影響しさらには歯肉の炎症や口腔細菌叢構成に影響する可能性が示唆された。
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Odontology
巻: Mar 25 ページ: -
10.1007/s10266-022-00703-x