研究課題/領域番号 |
19K10159
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
黒川 弘康 日本大学, 歯学部, 准教授 (10291709)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | バイオミメティクス / 構造色 / フロアブルコンポジットレジン |
研究実績の概要 |
赤から黄色の構造発色が可能な粒径の球状フィラーの配合率を数段階に変化させたフロアブルレジンを試作し、それぞれの発色現象について、分光反射率を測定することで検討した。 粒径260 nmの球状フィラーを79 wt%含有することで構造発色するユニバーサルタイプのコンポジットレジンであるオムニクロマ(トクヤマデンタル)をベースとし、フィラー含有量を70、60、50、40および30 wt%と変化させたフロアブルレジンを試作し、実験に供した。試作フロアブルレジンを内径8.0㎜で、厚さ1.0㎜あるいは3.0㎜のテフロン型に填塞、硬化させた後、精製水中に24時間保管したものを測色用試片とした。測色は、黒色基準板あるいは白色基準板上に静置した測色用試片の中央付近を、高速分光光度計(CMS-35FS/C、 村上色彩)を用いて3回ずつ行い、その平均値を求め、分光反射率をグラフ化した。 オムニクロマの分光反射率は、試片厚さ1.0㎜の条件において、黒板上でほぼ全ての波長を均等に反射し、分光反射率曲線はフラットな形状を示したのに対し、白板上での分光反射率は黒板上と比較して増加するとともに、長波長域になるにつれて上昇する曲線を示した。これは、背景色が黒の場合、入射した光が吸収されることで、構造色としての発色が顕著となったのに対して、背景色が白の場合では、背景色による光の反射とフィラーの微細構造に基づく光の反射が重ね合わされることで、明るさが増加したためと考えられた。一方、試作フロアブルレジンの分光反射率曲線はオムニクロマと類似するものであったが、分光反射率はフィラー含有量が少なくなるにつれて低下し、その傾向は背景色が黒の場合で顕著であった。これは、試作フロアブルレジンは構造発色するものの、フィラー含有量の減少にともないフィラー粒子間距離が変化することで、光の反射率が低下することを示すものと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究を遂行するために必要な測色試片の作製ならびに高速分光光度計およびクリスタルアイによる測色手技は確立されており、研究計画通り順調に進行している。また、これまでに得られた研究成果を国内学会にて発表、新たな知見を得たことで、研究計画のブラッシュアップを図り、令和2年度以降の研究のさらなる進展を目指している。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度の研究において、試作フロアブルレジンの分光反射率はフィラー含有量の減少にともない低下することが判明した。またフィラー含有量の違いは試作フロアブルレジンの機械的性質に影響を及ぼし、フィラー含有量が70 wt%で、ユニバーサルタイプのコンポジットレジンと同等の曲げ強さおよび弾性率を示した。したがって、構造発色を示すフロアブルレジンの開発においては、70 wt%程度のフィラー含有量が必要であり、令和2年度においては、フィラーの配合量を70 wt%および60 wt%と変化させたフロアブルレジンを、色調の異なる硬質レジン歯に形成した規格窩洞に填塞した際の、レジン充填部と窩洞周囲の硬質レジン歯との色調適合性について評価する。
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