研究実績の概要 |
当該年度は,集積したマクロファージ,TLR4,およびIL-1RI間の相互作用を解析した。結果として,露髄後の三叉神経節におけるマクロファージの集積が,舌の熱または機械痛覚過敏の発症に関与することが示された。次に, M1露髄と同時に選択的 TLR4 アンタゴニスト (LPS-RS) を三叉神経節に注入し, 露髄 1 日後にHWTの計測,三叉神経節第三枝領域における FG 標識 IL-1RI 陽性細胞数を免疫組織化学的に解析した。結果として, TLR4 シグナルがIL-1RI 陽性三叉神経節ニューロン数の増加をもたらしたことが示された。また, あらかじめ FG を同側舌縁部に投与し, 選択的 TLR4 アゴニスト (recombinant Hsp70) を未処置ラットの三叉神経節に注入し, HWT 測定と IL-1RI 陽性細胞数を免疫組織化学的に解析した。この実験結果から三叉神経節ニューロンにおいて TLR4 シグナルを介して IL-1RI が増加することが示された。さらに, あらかじめ FG を同側舌縁部に投与し, 未処置ラットの三叉神経節にrecombinant IL-1β を投与した後, HWT 測定および FG 標識 TRPV1 陽性三叉神経節ニューロン数を免疫組織化学的に解析したところ,recombinant IL-1β を TG に投与して 1 日後において同側舌縁部への機械および熱刺激に対する HWT が有意に低下し, FG 標識 TRPV1 陽性ニューロン数が有意に増加した。この結果から IL-1β―IL-1RI シグナルが三叉神経節ニューロンでの TRPV1 発現を増強し, 舌の熱および機械痛覚過敏を発症する可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当該年度の予定として、「④歯髄炎発症後のMacrophage, IL-1β, IL-1RⅠおよびTLR4の拮抗薬あるいは阻害薬の三叉神経節内直接投与後における異所性痛覚過敏抑制効果の検索:ラットを麻酔後,片桐らの方法に従い,ガイドカニューレを頭蓋骨表面から9 mm下方に挿入し,カニューレの先端が三叉神経節の表面にて接する状態に設置する。固定後,表題の拮抗薬あるいは阻害薬をガイドカニューレより持続投与する。三叉神経節内微量投与により昨年の研究結果で明らかとなった舌痛覚過敏にいかなる変化が発現するか検索を行う。」および「⑤歯髄炎発症後のMacrophage, IL-1β, IL-1RⅠおよびTLR4の拮抗薬あるいは阻害薬の三叉神経節内直接投与後におけるタンパク合成変化の検索:同様に,表記拮抗薬あるいは阻害薬をガイドカニューレより三叉神経節内持続投与により,同部節内のタンパク合成にいかなる変化が起こるか検索する。」の2点を企図していたが、予定以上に順調に終了することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
p38 のリン酸化はHsp70-TLR4 シグナル伝達にいかなる関与を認めるか検索するために,M1露髄と同時に選択的 TLR4 アンタゴニスト (LPS-RS) を三叉神経節に注入し, 露髄 1 日後にHWTの計測,三叉神経節第三枝領域における FG 標識リン酸化 p38 陽性かつ IL-1RI 陽性細胞数を免疫組織化学的に解析する予定である。 本研究の結果から,M1 歯髄炎により, 三叉神経節第三枝領域におけるマクロファージの集積およびマクロファージにおける IL-1β の産生亢進, 三叉神経節ニューロンでの Hsp70-TLR4 シグナル増強による p38 リン酸化を介した IL-1RI の増加, および IL-1β シグナル増強による舌を支配するTRPV1 陽性三叉神経節ニューロンの増加による, 舌痛覚過敏発症メカニズムを解明することを目的とする。
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