本研究では、インプラント周囲炎治療を通じて、細菌のゲノム情報と臨床データに基づく統合的な細菌ネットワーク解析から疾患原因となる細菌叢パターンと臨床的パラメータの選定、細菌叢の変化と治療効果の関連性を検討した。さらに、インプラント周囲疾患の診断・治療の指標となる細菌学的因子を解明し、新たな診断指針および治療プロトコールを開発することを目指した。 本年度は昨年度に引き続き、インプラント周囲炎の治療と治療後のサンプル採取を行い、16S rRNA gene sequencingによる細菌叢解析を行なった。その結果、非外科治療介入によりインプラント周囲炎が治癒した症例ではPorphyromonas属の減少と、Streptococcus属の増加が見られ、これら二つの細菌の構成比であるPorphyromonas/Streptococcus比が治療効果や予後を予測する新たな指標になる可能性を確認し、これを既に国際的科学雑誌に報告している。 さらに、外科処置後の細菌叢の変化についても検討し、疾患が治癒した場合にはTreponemaやFusobacteriumなどの病原細菌が減少することを確認した。この研究結果は、インプラント周囲炎の診断と治療方法を改善し、患者のQOL向上に大いに貢献する可能性がある。そして、より具体的な細菌種の増減が治療効果と関連していることを示すことで、よりパーソナライズされた治療アプローチを可能にすると考えている。また、治療予後の予測も可能にとなり、患者や医療従事者の治療選択を支援する可能性を示した。
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