研究課題/領域番号 |
19K10166
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
野崎 剛徳 大阪大学, 歯学部附属病院, 准教授 (30263304)
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研究分担者 |
石濱 泰 京都大学, 薬学研究科, 教授 (30439244)
豊田 岐聡 大阪大学, 理学研究科, 教授 (80283828)
三浦 治郎 大阪大学, 歯学部附属病院, 助教 (70437383)
清水 真人 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (70380277)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 歯周組織再生 / メタオミクス |
研究実績の概要 |
本研究では、良好な組織再生を得るために必要とされる組織の微小環境とはどのようなものであるのか、また良好な微小環境が構築される際に、組織を構成する各種細胞の配置や関係にいかなる変化が生じるのかを、代謝の変動という側面と細胞の三次元的超微細構造の変化という側面から読み解くことを目的としている。このうち代謝の変動については、メタオミクスの手法を用いて解析を行うことにいていることから、本年度はまず、歯周病患者と健常者から採取した自然唾液と刺激唾液を検体として、ガスクロマトグラフ/マススペクトロメトリー(GC/MS)を用いたメタボロミクス解析により、病的状態にある組織と健康な組織における代謝の違いを効率的に検出する手法を検討するとともに、両者に含まれる代謝物量の比較解析を行った。 その結果、固相抽出カラムの使用によって、従来は2日を要していた分析時間を約2時間に短縮する方法を確立するとともに、患者群と健常者群では、自然唾液を検体に用いた場合には、48種の代謝物で検出量に有意な差が見られることを明らかにするとともに、そのうち29種の化合物を同定した。また、刺激唾液を検体に用いた場合には、21種の代謝物で検出量に有意な差が見られることを示すとともに、そのうち9種の化合物を同定した。さらに、自然唾液と刺激唾液では、検出量に有意差がみられる代謝物が異なることを明らかにした。そして、これらの結果をASIA-OCEANIA MASS SPECTROMETRY CONFERENCE 2020 (Macau, China)において発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では、本年度はまず動物モデルを用いたオミクス研究を行う予定としていたが、予備的な検討を進めたところ、代謝の変動を高感度かつ正確に捉えるためには検体の質を均一に保つことが非常に重要であることが明らかになった、そこで、2年目の実施を予定していた着目すべき代謝物・代謝経路を絞り込むための研究を先行して行った。 検体としては、我々がすでに検出実績を有する歯肉溝浸出液(GCF)に加え、より容易かつ安定的に採取が可能な唾液についても、検体としての利用の可能性を検討した。その結果として、固相抽出カラムの使用によって、従来は2日を要していた分析時間を約2時間に短縮する方法を確立するとともに、自然唾液と刺激唾液では、検出量に有意差がみられる代謝物の種類が異なり、自然唾液には口腔内細菌由来の代謝物が、また刺激唾液には血液成分由来の代謝物が多く含まれていることが示された。ここまでの進捗に特に問題はなく、概ね予定どおりに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
現在は歯肉溝浸出液(GCF)と自然唾液で変動に同期がみられる代謝物の選出と検証を進めているところであるが、今後はこれに加えて、同一サンプルを検体にしたプロテオーム解析を行って、代謝産物量の変動を掌る酵素等の発現変動について解析を行い、そのメタオミクス分析の結果を基にターゲットとすべき代謝物・代謝経路を絞り込む予定としている。 またこれと並行して動物モデルの作成を行い、組織再生療法によってもたらされる良好な創傷治癒・組織再生に際して起こる代謝の変化と、細胞の三次元的超微細構造の変化について、解析を進めていくこととしている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では初年度に動物モデルを作成する予定とし、動物購入のための費用を大きく見積もっていたが、予備的な検討を重ねていく過程で、代謝の変動を高感度かつ正確に捉えるためには検体の質を均一に保つことが非常に重要であることが明らかになったことから、動物購入に先立って着目すべき代謝物・代謝経路を絞り込む研究を先行して行うこととして、動物購入を次年度の予定としたことにより、その費用が次年度使用額となった。
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