本研究の目的は、顎骨壊死に対する新規歯科治療法の確立である。骨粗鬆症薬の服用患者は、抜歯等の外科処置を行った後、顎骨壊死を引き起こす可能性が高い。壊死に陥った骨が腐骨となれば外科的に除去する必要がある。顎骨壊死は感染が引き金となり発症・憎悪するとされている。よって、予防策を含めた顎骨壊死に対する抗酸化療法という新たな治療法を開発することが本研究の目的である。 申請者らは、ナノレドック粒子の抗酸化作用によって歯周炎やインプラント周囲炎を治療する方法を報告してきた。ナノレドックス粒子は、(1)炎症因子を促進させる過剰な ROS を消去(抗酸化)する、(2) 口腔内の温度変化によるゾルゲル反応を利用し、操作性を維持しながら顎骨壊死の病巣組織に浸透した後に停滞性を発揮する(局所特異性の向上)、これらの特性を兼ね揃えた斬新的なポリマーを作製した。そして、顎骨壊死モデルにおけるナノレドックス粒子の抗炎症・抗酸化効果をメカニズムと共に明らかにすることを本研究の目的とする。この方法を発展させ、顎骨壊死に対する抗酸化療法の可能性の検討に着手する。顎骨壊死は、病巣に活性酸素種が生じている。そこで、体温下でゲル化することで、局所的かつ効果的に活性酸素種を消去するナノレドックス粒子を設計し、その治療効果の検証を始めた。この新たな治療方法の開拓は、既存の対症療法とは異なり、患者に有用な治療法の基盤創出が期待される。
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